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「おれまりさ!」 「……」 「ゆっくりしていってね!」 「『魔理沙はアリスのことが大好きだぜ』、言って御覧なさい」 「まりさはありすのことが大好きだぜ!」 「……!」 私の胸から全身に悦楽が駆け巡る。 「ほら、食べなさい」 「ゆっゆっ! まりさはありすのことが大好きだぜ!」 これいいわぁ……めっちゃかわいいわぁ…… 「おかわりはいくらでもあるからね……」 「師匠」 「どうした、鈴仙」 「例の『ゆっくり俺魔理沙』ですが、最近になって目撃報告が著しく増加しています」 「ふむぅ……」 「発見者の人数、頻度、時間帯から鑑みるに、どうやら個体は多数存在するようです」 「伝説級にレアだった俺魔理沙の増加……既存の個体が進化したのか、突然変異したのか……気になるところね」 「それと、気になる点があと二つほど」 「何?」 「目撃場所なんですが、ある地点を中心として展開しているんですよ」 「ある地点?」 「そうです。その地点を中心に適当な大きさの円を描くと、目撃場所のすべてを包含できます。」 「なるほどね。調査はしたの?」 「そこで残りの一つなんですが、調査員のレポートに興味深い内容があったのです。近隣にて動く人形を見た、と」 「………………」 「心当たりでも?」 「当たりも当たり、大当たりね。レポート見せてくれる?」 生物は生き延びるため、環境に順応した進化をしていく…… より安全で、より餌を得やすい方向へ。 幻想郷の生態系が、いま変化しつつある…… 「おれまりさ! おれまりさ!」 「うふふ……かわえぇ……ほんまかわえぇわ……」 ちょこっと修正。 -- Jiyu (2008-10-23 04 09 37) 歪んだ愛情がまさかこのような事態を呼ぶとは、アリス逃げてー! -- 名無しさん (2008-11-13 12 56 15) アリスかわいいよおお -- 名無しさん (2010-02-05 23 26 42) アリスはこれくらい痛い方がいい -- 名無しさん (2010-11-27 13 40 44) なんとも分りやすい犯人ww -- 名無し (2011-03-19 01 32 46) これいいわぁ^^ -- 名無しさん (2011-07-31 13 23 01) というわけで魔法の森に やってきました! あっやべ、ここマ○オの やつだ -- 名無しさん (2012-08-10 22 46 23) アリスは可愛い…ハアハア -- どうも‼ #65038;名無しです (2014-03-27 20 11 58) 名前 コメント
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13-ゆっくりしていってね!!〔ゆっくりしていってね!!〕 作品名:苺ましまろ 作者名:[[]] 投稿日:2008年2月27日 画像情報:640×480px サイズ:91,129 byte ジャンル:ぐぬぬじゃねえ キャラ情報 このぐぬコラについて コメント 名前 コメント 登録タグ 2008年2月27日 ぐぬぬじゃねえ 個別苺ましまろ 苺ましまろ
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「ゆ? ゆっくりうごいてるよ! もうすぐうまれるね!」 「ゆゆ! ほんとだわ! いまやわらかいばしょをよういするわ!」 ありすは急いで脇の方に置いてあった枯草を、れいむの前に敷き詰める。 ちょうどそこは、れいむの頭から生えている赤ちゃんたちの落ちる場所である。 「ゆっくりうまれてね!」 「「「ゆっゆ!」」」 産まれる直前ともなると、親の言葉に反応してプルプルと震える事ができる。 れいむはその振動を感じ取って幸せに包まれた。 もうすぐ愛する我が子と会える事に。 「ゆゆ! うまれるわ! ゆっくりがんばってね!」 ありすが掛け声をかける。れいむは子供たちが無事に生まれる事を願っていた。 ポロリと。頭の茎から一匹のありすが落ちた。そしてそれを皮きりに残り七匹も枯草の上に落ちてくる。 たっぷりと敷き詰めた枯草の上は柔らかいのだろう。落ちた後も枯草の上でモゾモゾとしていた。 親である二匹は心配そうに見つめていた。 やがて、三匹が目を開けた。そして二匹の方を向いて、生まれたてとは思えないほど大きな声で 「「「「ゆっきゅりちていっちぇね!!!」」」 そう言った。れいむはその光景を見て思わず涙ぐむ。 「ゆぐ、ゆぐっ!・・・ゆっくりしていってね!!!」 ありすもとても幸せそうな顔で挨拶を交わす。 「ゆーゆ♪」 「ゆっきゅりごひゃんたべちゃわ!」 「ゆっくりー!」 ありすが三匹とれいむが五匹。植物型でも少々多い。 が、両親は特に気にしなかった。今の季節は春である。食料も出産前から十分に溜めている おうちの方も、ゆっくりにしてはかなり広い方なので、狭いという事もない。 「おちびちゃんたち! ゆっくりごはんをたべてね!」 れいむがそう言うのと同時に、頭の上から茎が落ちてきた。 子供に送られていた栄養がたっぷりと詰まっていて、味もほどほどに抑えられている茎は 最初に子供が食べるものとしては最高の餌だ。 ありすとれいむはそれらを口の中に入れて、むーしゃむーしゃと噛み砕いた。 「ゆゆ! ゆっきゅちごひゃんをとらないでね!」 一匹の赤れいむが怒り出す。れいむは謝りながら 「ごめんねあかちゃん! でもこれでやわらかくなったからゆっくりたべれるよ。」 「ゆっくりたべてね!」 生まれたての赤ちゃん達はむしゃむしゃと柔らかくなった茎に被りつく。 そして生まれて初めての食事を楽しむ。 「「「「「「「むーちゃ!むーちゃ! ちあわちぇー!」」」」」」」 「ゆっきゅちちちぇいってね!!!」 「ゆ?」 両親は何か違和感を感じた。が、この時はそれは何なのかはわからなかった。 食事を終えた赤ちゃんたちは、さっそく家の中で遊んでいた。 「ゆっっきゅちおうたをききちゃいよ!」 「ありちゅはとかいちぇきなおうちゃをききちゃい!」 「れーみゅはすりすりしちゃいよ!」 無邪気に親に甘える赤ちゃん達。その中で変な言葉が聞こえてきた。 「ゆっゆっー! ゆっきゅりちちぇいっちぇね!」 一番小さい赤れいむである。 「ゆゆ? れーみゅたちはゆっきゅちちちぇるよ?」 「どうしたのあかちゃん? ゆっくりしてるわよみんな?」 赤れいむに話しかける家族。しかし帰ってくる答えは 「ゆっゆっゆー!」や 「ゆっくりー♪」 「ゆ?」 といった言葉しか返さない。というか基本的に「ゆっくりしていってね!!!(発音修正済み)」 か、「ゆー」とかしか言わないのだ。 「ゆ? どうちちゃったのれーみゅ?」 心配そうに見つめる兄弟 「ゆゆ! どうなってるの? まさかびょうきなの!」 れいむはソワソワと落ち着きなくおうちの中をうろついている。 ありすは家族を落ち着かせようとした。 「おちついてねみんな! いまぱちゅりーをよんでくるわ!」 そういって大急ぎで近くのぱちゅりーを呼びに行った。 「むきゅん! これはせんぞがえりね!!!」 「ゆー? なにそれぱちゅりー?」 ぱちゅりーの言った言葉の意味がわからないれいむ達。ぱちゅりーは話を続けた。 「むかしむかし、ゆっくりがだれにもじゃまされずにゆっくりしていたじだいとがあったのよ! むかしはみんな『ゆっくりしていってね!!!』しかいわなかったそうだわ!」 「それで! だいじょうぶなのあかちゃんは!」 ぱちゅりーはあくまで冷静にみんなに話す。 「おちついてねありす。これはとてもうんのいいことなのよ! むかしのゆっくりはぜったいにゆっくりできるっていいつたえがあるの! このこもとてもゆっくりできるはずよ!」 「ゆゆーん! さすがれいむたちのこだね! とってもゆっくりできるなんてすごいね!」 「とってもとかいはなこね! ありすはうれしいわ!」 「れーみゅはとちぇもゆっきゅりできるんだね!」 家族はとてもゆっくりできるという事を大いに喜んだ。 そして家族の生活は始まった。 最初の頃は、言葉が伝わらずに大変苦労したが、それでも長い間暮していると、言葉が伝わるようになっていった。 元々、ゆっくり達の話す『ゆっくり』にはかなり広い範囲の意味が込められている。 それこそ『おいしい』という意味から敵がいるかいないかまで、状況に応じて意味が違ってくる。 太古のゆっくりはその微妙なニュアンスの違いを感じ取っていたのかもしれない。あるいは意志の疎通など必要なかったのか。 とにかく、進化したとはいえ現在のゆっくり達の遺伝子にもそれは受け継がれている。 要は馴れれば分かるようになってくるのだ。 「ゆっくりしていってね!」 「そうねれいむ! きょうはおそとでとかいてきなひなたぼっこをするわ!」 「ゆっくりおひさまにあたろうね!」 「おかーさんもゆっくりいくよ!」 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆー!」 この一月の間に完璧なコミュニケーションが取れるようになった。 家族は近くの野原で思い思いに遊んだ。 「ゆっくりころがるよー!」 「ゆゆー! まってねばったさん!」 「ゆゆーん! とかいはのたんぽぽよ! れいむにあげるわ!」 「ゆっくりー! ゆっくりしていってね!!!」 「おねーちゃん! れいむもほしいよ!」 両親はその光景を眺めていた。 「みんなとってもゆっくりできてるね!」 「そうよね。ありすたちはとってもしあわせものね。」 互いに頬を寄せ合う二匹。それは親愛の証でもあった。 その時だった。二匹の後頭部ががっちりと何かに掴まれたのは。 「ゆゆ! だれなの! ゆっくりはなしてね!」 「そうよ! ありすたちはとってもよっくりしてるのよ!」 「ぷくううううううううう」と膨らんで怒り出す二匹。しかし掴んだ相手はそんな事はまるで気にしなかった。 「う~♪ あっまあまだっどぉー♪」 間抜けな声が聞こえた。そしてそれは近くで聞いてはいけない声だった。 「「でびりゃだあああああああああ!!!!!」」 「やめてね! おかーさんたちをはなしてね!!!」 子供たちは両親を掴んだ敵に対して体当たりを繰り出す。しかしそんなものは効果がない。 「うー? じゃまなんだどぉー! ちっちゃいあまあまはおちびちゃんたちのぶんなんだからー! だまってるんだどぉ♪」 そういって足でガッ!っと踏みつける。 「やべちぇえええええええええ!!!!」 「いたいですうううううううう!!!! 「ありすもういやああああああ!!! だれかたすけてえええええええええ!!!!」 次々に踏みつぶされる兄弟。あのれいむも家族を助けようとするが、 「まってねれいむ!」 長女のありすに止められた。 「ゆ! ゆっくりしていってね!」 「わたしたちじゃかてないわ! どすをよんできて!」 れいむ達の家の近くにはドスまりさが住んでいる。群れは持っていないが、ドスの周りには大勢のゆっくりが住んでおり れいむ達もその一つだ。 ドスならばみんなを助けられるとありすは考えた。 「ゆっくりしててね!!!」 れいむはそれを理解して急いでドスの家へ向かっていった。 れみりゃは家族を踏むのに夢中で気づかなかった。 「う~? ぷにぷにしておもしろいどぉ~♪」 「いじゃいよ! やめてよ! ゆっくりできないよ!」 れいむは走った。途中で何度も転びそうになりながらも必死で走った。家族の為に。 その思いが通じたのか、何の障害もなくドスの家の前についた。 「ゆっくりしていってね!!!」 そういってドスの家へ飛び込むれいむ。 「ゆゆ? ゆっくりしていってね!!!」 中にはドスと何匹かのゆっくりがいた。その中にはぱちゅりーのつがいのまりさもいた。 「どうしたの? ゆっくりはなしてね!」 ドスの声に反応して、さっそく助けを求めようとするれいむ。 しかし 「ゆゆ? ちゃんとはなしてくれないとわからないよ! ドスだっておこるよ!」 「ゆ・・・ゆっくりしていってね!!!」 「さっきからなにいってるかわからいよ! れいむはちゃんとしゃべってね!!!」 「ばかなの? しぬの?」 かれこれ10分はこんな調子である。 れいむの言葉は馴れた家族には伝わったが、初めて会話する他のゆっくりには通じなかったのだ。 「ゆ・・・ゆっゆっくりしていってね!!!」 ついには泣きだしながら喋るれいむ。 「だからわからないっていってるでしょ? ばかなの?」 だんだんとドスは苛立ってきた。そしてもう家から追い出そうかと考えたちょうどその時 「どすー!たいへんなんだよー!れいむとありすたちがれみりゃにおそわれてるんだよー!」 「れみりゃのこどもたちもいっぱいきてるみょん!」 運よくれみりゃ達を目撃したちぇんとようむがドスに伝えに来たのだ。 「ゆ! わかったよ! すぐいくね!」 「ゆっ!ゆっくりしていってね!!!」 ドスがやっと動き出した事に喜ぶれいむ。 そして一目散に家族の元へ向かった。 助けを連れて戻ってきたれいむ。しかしそこに居たのはれみりゃ達とただの皮だった。 「うー! おいしかったどぉー! れみ☆りあ☆うー☆」 「とってもえれがんとだどぉ~♪ れみりゃのおちびちゃんはとってもかりしゅまなんだどぉー!」 「さくやー! のどがかわいた~♪ れみりゃはおれんじじゅーすがのみたいどぉー!」 「うっうー! のう☆さつだんすでふみふみだどぉ~♪」 そこには餡子を失って皮だけになった家族で弄ぶれみりゃ達がいた。 既に光のない眼で空を見ている両親と兄弟。先ほどまで元気に動いていた家族。 それが今ではただの動かない皮。 「ゆ・・・・ゆっくりじでいっでねぇえええええええええ!!!!!!!」 れいむは半ば半狂乱になりながらゴロゴロと転がりまわった。 それを周りのゆっくりが止めてるうちに、ドスはれみりゃ達に近づいた。 「ゆっくりできないれみりゃはゆっくりしんでね!!!」 それだけ言い放つと、口からドススパークを放ち、れみりゃ達をあっという間にやっつけた。 このれみりゃ達はみんなのごはんとして分けることになった。 ドスの家の前。近くのゆっくりが全員集まり、れいむとありす達を土の中に埋葬していた。 そこには当然れいむが居るはずである。しかしれいむはそこから少し離れた場所にいた。 近づけて貰えないのだ。 ゆっくり達は最後の別れを済ませた後に、口ぐちにれいむを責め立てた。 「れいむがちゃんといわないからありすたちはしんだんだみょん!」 「こどもなんだからしゃべれるでしょ! ほんとにできそこないのゆっくりだね!」 「ありすたちがしんだのはれいむのせいだね! はんせいしなくていいからゆっくりしんでね!!!」 「ことびゃもまちょもねはなちぇないなんて、ゆっきゅちできにゃいね!!!」 「ほんとはきょうだいをゆっくりさせたくなかったんでしょ!」 遂にはドスまでも 「れいむのせいだからね! ドスがもっとはやくついたらみんなぶじだったんだよ! わかってるの? ばかなの? しぬの? ゆっくりしないでどっかいってね!!!」 「ゆゆ・・・ゆっくりしていってね!!! ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくじでぎるわげないでしょおおおおおおおおおおおお!!!! どっどどでていってねえええええええ!!!!!」 こうしてれいむはこの付近から立ち退くことになった。れいむにとって嬉しかったことは ぱちゅりーだけは最後まで味方でいてくれた事だ。 「れいむ、たべられるものやかりのしかたはおぼえてるわね?」 出発当日、ぱちゅりーは朝早くからやってきて真剣な目で問いかけてきた。 「ゆっくりしていってね!!!」 ぱちゅりーには言葉の意味がわからなかったが、おそらく肯定したのだと思って話を続けた。 「そう、おうちのつくりかたもだいじょうぶね? これはあさごはんよ!」 そういって口から差し出したのは、はちみつだった。 野生のゆっくりにとっては滅多に食べれない貴重なものである。 「ゆっくりしていってね!!!」 「れいむもゆっくりしてね!!! がんばってねれいむ!!!」 帰って行ったぱちゅりーの後ろ姿を寂しげに見つめながら、れいむは新たな家を求めて旅立った。 【あとがき】 昔書いて途中でほったらかしたヤツ うん。何に影響を受けてたかよくわかるな俺 あと、久々に発掘した時に書かれてたメモが 【メモ】 ジャギ様登場 どういうことなの…… byバスケの人 このSSに感想をつける
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新・アリス×ゆっくり魔理沙より続き 「おわった?」 「もう少しよ……はい、終わり」 ゆっくりまりさに帽子をかけながらアリスはそう言った。 「すっきりしたよ!」 今までじっとしていた分を埋め合わせるかのようにまりさはそこらじゅうを跳ねまわった。 「家具にぶつからないように気をつけてよ」 「ゆっくり、ゆっくり」 返事か鳴き声か判別しにくい声をあげながらまりさは相変わらず跳ねまわっている。 「さて、これぐらいあれば……二、三体分ってところかな?」 敷物の上に落ちている金色に輝く髪を集めながらアリスが呟く。 まりさの髪は人間と同じように切ってもすぐに生えてくる。人形の素材には最適だ。別に人間の髪を使ってもいいのだが、自分の髪を使うと人形が盗まれたときに困ったことになる。同様の理由で人に頼んでも断られるだろう。現に、一度魔理沙に髪を切らせて欲しいと頼んだことがあるが、「呪う気か?」と一蹴されてしまった。 ゆっくりなら人畜・妖畜ともに無害な生物だから髪を採集しても特に問題はない、というわけだ。 「さて」 そろそろお茶の時間だ。今日はうるさいのはいないし、静かにお茶を楽しめる。今日だけと言わず、彼女はしばらく来ないだろうが。 「まりさ、来なさい。お茶にするわよ」 「いつものゆっくりするの?」 「ゆっくりじゃなくてお茶よ。いい加減覚えない」 「ゆっくり、ゆっくり」 アリスは小さな溜息をついた。知恵が一向につかないのは困りものだ。もっとも捕まえた直後に比べればだいぶましにはなっている。騒ぎすぎない、暴れすぎない。……たったこれだけのことを教えるために何度折檻したことか。 「ゆっくり、ゆっくり」 アリスはまりさを抱き上げる。 「貴女、他のこと言えないの?」 「ゆっ?」 ふう、と今度は聞こえるほどの大きな溜息をつく。 「……ま、仕方ないわね」 自分に言い聞かせるようにそう呟き、お茶の用意に取りかかる。 「お茶受け何にしようかな……」 戸棚を開いてみると、一種類のお菓子がほとんどのスペースを占有していた。パッケージにはゆっくりまりさのイラストとともにこう記してある。 "銘菓 ゆっくり大福" 「いくら売れたお礼だからって、こんなにいらないのに……」 先日のこと。 ちょっと前に人間の里で人形劇をしに行ったのだが、その時に一体人形を忘れて帰ってしまった。そのことに気づいたアリスは、再び里に受け取りに行くことにした。これほど短い間隔で人里に行くのは久し振りのことである。 馴染みのある製菓店に挨拶に行ったところ、そこの店主が人形を預かってくれていた。 「これですね。はい、人形」 「ご迷惑おかけしました」 「いいんですよ。マーガトロイドさんにはお世話になってますし。ところで、先日お渡ししたお菓子は召し上がられましたか?」 「ええ、とても美味しかったです。あれなら紅茶だけでなく、飲み物全般に合うと思いますよ」 「そうだとは思うんですがね……」 「何か問題でも?」 「ええ、大したことじゃないんですが……売上がどうもよろしくないのですよ。味は確かなんですけどね……商品のインパクトが薄いんでしょうか」 アリスは陳列棚に置いてあるパッケージを見た。確かに地味である気もする。 「惜しい気分ですよ。まったく……」 「ゆぎーっ!!!」 突如店の奥から悲痛な叫び声が聞こえる。直後、アリスにとってあまり愉快でない人物を想像させる人物の頭がアリスの顔めがけて飛んできた。 「あうっ!」 「ゆぃっ!」 物体は顔面に直撃したが、弾力豊かだったので対した痛みはなかった。 「あああ! 起きたのかこいつ! 申し訳ありませんマーガトロイドさん!」 店主が慌てふためきながら飛んできた物体を拾い上げる。 「ゆっくりはなしてね!!!」 店主の腕の中でアリスの見なれた顔が暴れまわっている。 「ま……まりさ? の、頭??」 「ん? 確かにこいつは自分のことをまりさと言ってますが、どうしてそれを?」 「い、いえこちらの話です。……これは?」 「ゆぎゃー!!ゆぎゃぎゃー!!」 店主に掴まれているのが嫌なのか、猛烈に暴れまわっている。 「静かにしろ! ……こいつは最近この辺に現れたんですよ。店の商品を荒らして食べていくので手を焼いていたんです。人間を襲ったりはしないようですし、見た目が見た目ですから子供の評判も良くて、処分するには忍びなくうちで預かっているんです。全く懐きませんがね」 「ゆっくりしね!!!」 「あいてっ!」 店主の腕を噛み、怯んだ隙に魔理沙の頭は飛び出した。素早くアリスの元に這い寄る。 「ゆっ♪ ゆっ♪」 アリスの脚に頬を摺り寄せている。 「……懐いてますね」 「……そうみたいですね」 アリスは考えた。これはひょっとして魔理沙そのものなのでは? 魔法に失敗したか、誰かにこの姿にされたか。それで自分に助けを求めているのでは? あるいは、幻想郷の誰かが、魔理沙そっくりに誰かが創りだした生物……だとしたらなぜ人里に? (いずれにせよ、興味深い生き物だわ。研究の価値はありそうね) 下を向いてアリスが答える。 「あなた、名前は?」 「まりさだよ!」 アリスはまりさと自称する物体を拾い上げた。先ほど顔面で確認したとおり感触は柔らかく、粘り気のない餅のようだ。……ここの新作のお菓子に感触が似ている。 「この子、処分に困っているようでしたら、私に引き取らせていただきませんか?」 「え! それは構いませんが……今はおとなしいですが、暴れたり食い荒らしたりするかもしれませんよ」 「構いません」 アリスはにっこりとほほ笑み、そう答えた。 「そうですか、それは助かります」 アリスは時計を見た。もうすぐ昼時だ。店も忙しくなるだろう。 「では、お邪魔にならないように、私はこの辺で」 「あ、はい! またいつでもこちらに遊びに来てくださいね」 「はい、ぜひ……あ、新作のお菓子ですけど、この子をイラストを使ったらどうですか? 饅頭見たいな形してますし」 アリスはまりさを軽く揉んで感触を再確認する。やはりこのお菓子に似ている。 「ふむ、確かに独特の顔をしてるんで受けるかもしれませんね……でもそうなると、今の名前と合わないので名前も変えた方がいいですね。どんな名前がいいかな……」 「ゆっくりしていってね!!!」 店主がまりさをじろじろと見ていると、まりさがそう叫んだ。 「……そうだ、ゆっくりだ! この顔に合うイメージはまさにゆっくり。『銘菓 ゆっくり大福』! これで行こう!」 (……変な名前) アリスはそう思ったが、胸躍らせている店主に水を差さないように黙っていた。 後日、ゆっくり大福は爆発的なムーブメントを引き起こした。独特なまりさのイラストと"ゆっくりしていってね!!!"のキャッチフレーズが受け、若い女性と子供を中心に大人気を博した。 ……そのうちに彼女を表現する記号の羅列が電子の海を駆け巡ることになるのだが、それはまた別の話。 文化的にほとんど人里と隔絶された幻想郷にも流行りの波は徐々に押し寄せていた。お茶を嗜み、または菓子類を好む者たちの間でひっそりとゆっくり大福は流通していった。 博麗神社。ここの巫女も例外ではなく、どこからかゆっくり大福を手に入れてその味にすっかり夢中になっていた。今ではお茶を飲みながら毎日のようにつまんでいる。 「ゆっくり、ゆっくり」 最近現れた自分そっくりの頭もこのお菓子が気に入ってるようだ。 「よーっ、霊夢。遊びに来てやったぜ」 頼んでもないのに魔理沙がやってきた。まあこちらも暇だったし、お菓子も美味しくて機嫌もよかったので、魔理沙にも振舞ってあげることにした。 「れ、霊夢? それは……」 お菓子を見た魔理沙が驚いている。いや、怯えている、という方が正しいのだろうか。そういえば前から気になっていたが、菓子袋に描いてある絵は魔理沙に似ている。 「この袋に描いてある饅頭の絵って魔理沙そっくりねえ、うふふ。魔理沙も食べると甘いのかしら」 「お、お前もか、霊夢ーーーっ!!」 「わっ!」 いきなり叫んだかと思うと、魔理沙はよろめきながら箒に乗って飛んで行った。 「……なんなの」 「ゆっくりしてないね!!!」 「くそう、霊夢もおかしくなっちまった。アリスが妙なこと吹き込んだのか……」 箒の上で胡坐をかき、腕をながら魔理沙はこれからどうするか考えた。 「……パチュリーのところに行くか。さすがにあいつは大丈夫だろう」 (略) 「は、謀ったなパチュリー!」 激しく飛び回り疲弊した魔理沙は箒の上に寝そべって息を切らしていた。 「ひぃ、ひぃ、ふぅ……ぢ、畜生、幻想郷はいつからカニバリズムの聖地になったんだ。迂闊に降りるわけにもいかないぜ……」 魔理沙の奇行はしばらく続くことになる。 銘菓 ゆっくり大福は某所からネタをお借りしました。 新・アリス×ゆっくり魔理沙3に続く 魔理沙カワイソスwwwwこれは新鮮でいいな、GJ -- 名無しさん (2008-07-19 16 33 27) これはいいw -- 名無しさん (2008-07-25 09 39 57) (゚Д゚)・・・ -- 名無しさん (2008-10-03 18 04 51) ドタバタは皆さんお好きなようで! -- Jiyu (2008-10-05 23 44 15) 本家寄りの世界観でこの奇劇ww スバルスィ(意味不 -- 名無しさん (2008-12-09 02 08 32) ゆっくりがほしい・・・ -- 名無しさん (2009-08-08 10 14 00) たのしい -- 名無しさん (2010-11-27 17 28 26) 名前 コメント
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『人間社会でゆっくりしていってね!』 57KB 愛で 虐待 観察 考証 加工場 創作亜種 独自設定 考証) 社会描写 ※初投稿ですが、よろしくお願いいたします ※死なないゆっくりたちがいます ※ストーリーはありません、情景描写のみです ※ほぼ全面的に独自設定です ※決定的なミス描写があったため上げ直しさせていただきました。もうしわけありません。 「おはよーございます、おおきなおうちのにんげんさん! 」 毎日、玄関先の元気な甲高い声の合唱がこの家の朝の訪れを告げることになっている。 エントランスには、サッカーボール大の成体のゆっくりまりさが二体、後ろにはぱちゅりーとちぇんが待っている。 彼らは四匹で棒と板切れで固定された大きなポリバケツを神輿のように担ぎあげながら、家人が出てくるのをニコニコとした笑顔で待っている。 その声に、まだ眠そうなこの家の奥さんが出てくる。手にはポリ袋を一つ。 「あらあら、ゆっくりさんたち。おはようさん」 「おはようございます、おねーさん。まりさたちはごみのかいしゅーにきたのぜ!」 四匹のリーダーらしいまりさが、元気な笑顔で返事をする。 「はいはい、毎朝ごくろうさま」 と奥さんはゆっくりたちが担ぐポリバケツを開けて、手にしたポリ袋を放り込み蓋を閉める。 少し重量がふえたが、一日分の一般家庭のごみなら彼らは慣れたものである。 誇りにまみれた小麦粉色の肌の顔色一つ買えず、少し身をかがめるように決まり文句を唱える。 「むきゅ「「にんげんさん、いつもごみをありがとーございます!」なんだねーわかるよー」なのぜ」」 「またあしたもくるよ!」 とリーダーまりさが最後に締めて、ゆっくりたちは器用に彼らの言う「ごみさんおみこし」の向きを変えて、エントランスから門を出ていく。 門については毎朝、この家のご主人が新聞を取りにきたついでにゆっくりたちのために開けておいてあげている。 帰っていくゆっくりたちの背中に奥さんは労をねぎらうために、言ってあげる。 「みんなも今日はゆっくりしていってね」 「「「「ゆっくりしていってね!」」」」 と振り向けないのでそのまま彼らはベストのタイミングで合唱する。 これがこの街、M市のゆっくりたちの一日の始まりであった。 ※ ゆっくりたちが世に現れて10年という年月は、人間にとってはこの謎の多い『不思議饅頭』たちを社会に受け入れさせるのに十分な長さであり、ゆっくりたちにとっては良くも悪くも人間社会に適応させるのに十分なほどの世代交代を重ねた永遠に近いような年月であった。 その中でもM市はゆっくりたちの社会利用に先鞭をつけた都市でもあったが、多かれ少なかれゆっくりたちは、現在のところ社会に溶け込み、有効活用されている。 もしも、アンケートをとれば『ゆっくりは益獣である』という返答が圧倒する筈だ。 気の早い学者によっては、「ゆっくりたちは人間に与えられた新たなるパートナー」と定義づけている者たちさえいる。 「「「「んーしょ、んーしょ」」」」 まだ人通りが少ない中、「ごみさんおみこし」を担いだゆっくりたちが歩道をできるだけ邪魔にならないように進んでいく。 通勤時間前に運び終えるよう義務付けられている彼らはおみこしをかついでいるためぴょんぴょんすることはできないが、できるだけ早いずーりずーりで担当の家を回っていく。 だいたい成体四匹一組で1班。1班ごとに3-4件回ることになっている。 また、朝よりも昼や夕方のほうが都合の良い家庭やアパート、マンションなどもあり、朝に「ごみさんおみこし」を担いだゆっくりたちが歩道に殺到するというようなこともない。 そのあたりのローテーションについては、市の清掃局の担当官が厳密に管理している。 それでもそこここから、家々やアパートマンションのゴミ集積所を回った「ごみさんおみこし」を担いだゆっくりたちが現れ、ある目的地に向かって集まっていく。 ただし彼らが歩道を占拠するようなことはない。きちんと列を作って、一列縦隊にゴミバケツを担いだゆっくりたちは進んでいくのだ。 どのゆっくりたちも、ニコニコ笑顔を、むしろ不気味なぐらい崩さないようにして一生懸命進んでいく。 「「「「んーしょ、んーしょ、んーしょ、んーしょ」」」」 私語は許されない。甲高い彼らのしゃべり声は、さわやかな朝の中には少々うるさすぎる。 そして、少しずつ郊外に出始め、人通りが少なくなっていくうちに、人間の目が離れていくにしたがって、彼らの顔から人懐っこい笑みが失われて、だんだんと苦しみと悲しみを背負った苦悩の表情への変わっていく。 ゆっくりと、ゆっくりしない表情に。 「ゆぅ……」「ゆぐっ」「ゆひぃ」「ゆっゆっゆっ……」「ゆゆ……」「ゆっぐ……」「ゅう」などなど。 それでも悲鳴も私語も漏らさずに、ただ何か生きることそのものに耐えるような声が彼らの餡子の中から漏れでてくる。 そのうち彼らは一様にだらだらと目から涙を溢れさせながら、綺麗な縦隊を形成していく。 仲間たちの涙を踏みしめながら、ずーりずーりと進んでいく彼らが通ったあとには、ぬらぬらと糖分を含んで濡れる軌跡が刻まれていくのであった。 いつしかその道は「ゆっくり涙道」と呼ばれるようになっていた。 ※ 「にんげんさんたち! くつみがきするよ! あんよをきれいきれいにしていってね!」 M駅前の広場の一角にゆっくりまりさたちが10匹ほど並んでいる。靴磨きゆっくりだ。 「ゆっ! 人間さんいらっしゃい。あんよのおかざりさんをぺーろぺーろするよ?」 「ああ、お願いするよ」 彼らの前にある靴台に足を置いたサラリーマンの靴をまりさは一生懸命舐めていく。 地方都市であるM市は、まだまだ緑地や土の残る場所も多く、また通勤路によっては田んぼや畑のあぜ道を通ってくる人も少なくない。 そんな人たちにとって、駅の「ゆっくり靴磨き」は大変便利なものであった。 何しろ無料である。 彼らへの報酬はただひとつ「生きて良い」ということのみ。それだけで十分すぎる。 革靴についたドロやホコリやゴミを器用に舐めとっていくまりさ、どんな生まれをしてもどれだけ繰り返しても慣れない屈辱を勤労精神あふれる笑顔に隠すよう訓練されている。 だが、それでもうなじに疲れとは別な嫌な汗がじっとりと滲んでくるのは止められない。 「おい、まりさ」 「な、なに? にんげんさん」 「なにか忘れていないか?」 びくっ、と舐めるのを止めたまりさの顔に今度は別に冷や汗がはっきりと頬に流れ落ちてくる。 「は、はぃぃぃぃ!」 真っ青な顔になったまりさは、慌てて靴舐め作業を再開する。ただし、今度はBGMを自ら奏でながら。 「ぺーろぺーろ、しあわせー! にんげんさん、あんよをまりさにぺーろぺーろさせてくれて、ありがとうございます!」 目尻に涙を浮かべながら笑顔で靴を舐めていくまりさの様子を見てサラリーマンはうなずく。 別にサラリーマンはゆっくり虐待趣味があるわけではない。 ゆっくりという不思議饅頭は、あらゆる言葉や行動の一欠片でも隙があれば、それを極限にまで拡大解釈して増長する。 駅前の靴磨きのようにゆっくりにしては専門的な職場を与えられたゆっくりは、特に増長しやすい。 先ほどのように「ああ、お願いするよ」とか「いつもありがとう」などという人間からの感謝や挨拶を際限なく大きく解釈したあげく、ほぼすべてのゆっくりが「くつをぺーろぺーろして、にんげんたちをゆっくりさせてやってる」という思考に辿り着き始めるのだ。 そうなってしまえばあっさりと。本当になんのためらいもなくそのゆっくりは加工所行きだ。 いくら生き地獄の中に生きているゆっくりと言えども加工所よりは遥かにマシなのは、人間たちもゆっくりたちも骨身にしみて理解している。 むしろ、そのサラリーマンはわりとそのまりさを気に入っていて、毎日そのまりさに靴を舐めさせてやっているので、少しばかり思い入れがあった。 他のまりさたちに比べて舌が足首などにかかったりすることもないし、早く終わらせようと雑な仕事をすることもなかった。 なので、増長して加工所送りにならないように、あえて厳しい言葉をかけてやっているのだ。 それが彼、いや今の日本におけるゆっくりに対する「愛で方」でもあった。 それにもう一つ、ゆっくりを「ゆっくりさせない」ことが「愛で」に繋がる理由もあるが、それは後述する。 「ぺーろ、ぺーろ、し、しあわせー……」 だんだん声に元気がなくなっていく。 まりさの心のなかのゆっくりがどんどん消耗していくのが傍目にもわかってくる。 ゆっくりの通常種たちの中でも特にプライドの高いまりさにとって、本能的に「にんげんのあんよをぺーろぺーろするのはゆっくりできない」と精神に突き刺さっていくのだ。 蔑むようなサラーリーマンの視線がその重いを特に強くしている。 「お、おわったよ……、にんげんさん」 サラリーマンがひと睨みする。 「あんよをまりさにぺーろぺーろさせてくれてありがとうございましたぁっ!」 ヤケクソ気味に答えるまりさの顔は小麦粉の皮が透けて餡子色に褪めている。 どういう原理かゆっくりも、血の気が引いて顔色が青褪めることができる。 色は餡の種類ごとに違うが、中身が餡子のまりさとれいむは、特に人間の「土気色」に近い顔色になるため、表情がわかりやすいと評判であった。 「よし、まりさ。じゃあ今度は左足だ」 とサラリーマンは足を靴台に載せ替える。 「ひっ!」 まりさは悲鳴をあげるが、それでも気を取り直して靴を舐め始める。 「ぺーろぺーろ、しあわせー! ぺ、ぺーろぺーろしあわせー!」 と、ひたすら繰り返すまりさはもうゆっくりが枯渇しそうだ。 駅前の靴磨きがまりさ種ばかりなのは、特に選別されているわけではない。 この仕事を特に屈辱と感じることによって、増長することが少なく、加工所行きになることが少ないため自然に淘汰されそうなった結果であった。 そして、まだこの屈辱的な仕事はゆっくりにとっては「接客」というスキルが必要とされているだけ上等な種別に入る。 「ぺーろぺーろ……、にんげんざんのあんよをぺーろぺーろできて、まりざはじあわぜでずう!」 やがて涙ははっきりと頬をつたい、声が悲しみに滲むようになってきたあたりで、ようやくまりさは仕事を終えることができた。 本来、出勤時のサラリーマンにとってまりさに靴を舐めさせる5分は貴重なものだ。 大半のにんげんにとっては、そんな時間を割くより自分で靴を手入れして、少しでも朝にゆとりが持てるようにするものだ。 それでも毎朝のようにまりさの客になってやってるのは、間違いなく愛情であると言えよう。 だから一仕事終えてゆっくりを枯渇しているまりさに言ってやるのだ。 「まりさ。今日もゆっくりしていってね」 その言葉にまりさの精神はすっかり賦活し、全身でうれしそうにしながら返答する。 「ゆっくりしていってね!」 もちろん、言葉ばかりではない。 サラリーマンは靴台にしかけられている引き出しを開け、まりさに中にある錠剤を渡してやる。 人間にとっては、ちょっとツマミを回して開くだけで済むが、ゆっくりにとっては絶対に開くことのできない仕掛けになっている引き出しの中には、10個ほどの錠剤が入れられている。 しかもご丁寧なことに、その錠剤の容器は人間用のものと同じく一つ一つがプラスチックとアルミ箔でパッケージングされている。 つまりは、誰かが意志を持って与えてやらない限り、ゆっくりたちにその錠剤が渡ることはないのである。 「おにーさん! いつもありがとうなんだぜ!」 と、ゆっくりできないことばかり言うし、目つきも怖いが、いつも錠剤をくれるサラリーマンにまりさはお礼を言う。 だが、ゆっくりの反応速度ではすでに電車に向かっている背中へ言うのが精一杯だ。 そして周囲のまりさたちの羨ましそうな目にゆっくりを味わいながら、おさげの上の錠剤をお帽子の中にしまい込んだ。 この錠剤は糖衣錠であり、ゆっくりたちが全身全霊を使って求めている貴重な「あまあま」だ。 ただ、糖衣の甘味に反してその味や匂いはとてもじゃないがゆっくりできないものだ。 というのもこれはゆっくりたちのためにあるのではなく、ゆっくりの唾液を消毒殺菌し、また革靴の皮革に艶を与える成分を加えて「靴用クリーム」としての役割を与えるものだからだ。 だいたい一足分でその効果が消費されるために、「報酬」として与えられるようにしてあるというわけだ。 匂いや味そのものはゆっくりできないが、それでもゆっくりたちにとっては羨望の的になる貴重な「あまあま」だ。 また、このまりさが優秀なのは、その「あまあま」をすぐに食べてしまわず、お客が来るまでしっかりとお帽子の中に保存しておくことだろう。 仕事をはじめる前に「このあまあまはぺーろぺーろの前に食べるんだよ」と駅のゆっくり担当員に教えられているが、それの記憶をうんうんとともに排出せずに保っていられるゆっくりは少ない。 なので、きちんと舌を整えて接客することのできるまりさには、そのサラリーマン以外にも何人か常連がいる。 増長しなくても客のこない、つまり靴台の中の錠剤が減らない靴磨きゆっくりは一週間ほどで加工所送りだ。 そうやって淘汰されていくため、それなりにM駅前の靴磨きゆっくりは優秀なゆっくりたちが生き残っている。 彼らは駅のコインロッカーを改造されたおうちの中でも「おっきいほう」に住むことも許されているし、駅員からゆっくりフードも与えられている。十分に幸せなゆっくりであった。 自分に向けられた「ゆっくりしていってね」の余韻を味わいつつ、駅前広場を這う清掃ゆっくりたちを見ながら、まりさは自分の幸福を噛み締めるのであった。 ※ 清掃ゆっくりの登場は、一時期最悪の害虫とまで呼ばれたゆっくりたちの評判を回復させるきっかけになったと言えるだろう。 今では駅前や公園、繁華街、商店街、住宅街などに必ず存在する清掃ゆっくりたちは、路上のゴミや犬や猫、愛玩ゆっくりの糞、動物の死骸などを食べることを「許された」ゆっくりたちだ。 「ゆぐぇっ、ゆげぇえええええええ、まじゅいいいいいい!」 「ゆぎゃうえろろろろろ、これどくはいってる!」 「ゆぶぇええええええ、どくっどくっどぐううううう」 「でいむ゛じぬ゛うううううううう、じんじゃうよおおおおおおお」 早朝、まだ暗い内から声を押し殺しながらゆっくりたちが飛び出した目、吹き出すよだれや涙などを噴出させながら、のたうち回っている。 原因は彼らの中央に置かれている容器の中にある液体だ。 色はオレンジ色であり、それを与える「ゆっくり清掃所 ユックリーン・コーポレーション」の職員が持っている瓶には、ニッコリと笑うれいむの顔が描かれたラベルと「ゆっくり用オレンジジュース『ゆーぽん』」と書かれている。 確かに『ゆーぽん』はオレンジジュースといえば言えるのかもしれないが、『果汁0%』の表示でわかるように、人工香料と甘味料と着色料で作られたオレンジジュース()である。 だが「思い込みの不思議饅頭」にとってはそれで十分であり、十分にゆっくりたちの栄養剤、回復剤、治療薬として機能するのだ。 もちろん愛玩用やそれを対象にしたサービス業や医療などでは、果汁100%のものや柑橘類をふんだんに使われたものが使用される。 だが、現在の研究では人間の自己満足とゆっくりが「これはこうっきゅうなおれんじじゅーすさんなんだよ!」と思い込ませるための演出効果でしかないことが証明されている。 『ゆーぽん』はその中でも特に生産性のみに特化したオレンジジュースであり「ゆっくり専用ですので、絶対にゆっくり以外には与えないようにしてください」と注意書きが記されているような代物である。 とはいえ、かろうじて無数の実験用ゆっくりという、いくら消費してもほとんどコストがかからない物たちを数万単位で犠牲にした末に、「ゆっくりには害にならない」ということだけは証明されている。 そんな『ゆーぽん』に清掃業者が消毒剤や殺菌剤、芳香剤などが混ぜられて清掃ゆっくりたちには与えられている。 清掃ゆっくりなどに与えるようなものだ。わざわざゆっくりのためにそれらの薬剤が調整されているわけがない。 「ゆっくりが即死しない程度の」であればどんな毒物や劇薬であろうが、あとは勝手に『ゆーぽん』のオレンジジュースの色と匂いと甘味でゆっくりたちの生命は保たれるのである。 そしてこれらを与えられるゆっくりたちにとって、いくら「これどくはいってる!」と反応してしまうような味であっても、貴重なあまあまなのだ。 そして、ゆっくりにとっての「どく」であったとしても、かすかに残る『ゆーぽん』の味と匂い以上の「あまあま」など、彼らには「ほぼ」与えられることはない。 「どぐっ……もっと、ゆっぐ……」 のたうちまわった挙句、死ぬゆっくりも珍しくはない。 黒ずんで死んだありすの死骸にゆっくりたちは顔をしかめる。どうやら「ほぼ」の例外がきたようだ。 「あー、死んだか……ほれ、今日最初のゴミだ」 と職員はありすの死骸をのたうちまわりながら『ゆーぽん』をむさぼるゆっくりたちの中に蹴り入れる。 仲間の死体という「あまあま」。 ズザザザザザ。 と早くも発しはじめたありすの死臭にゆっくりたちは飛び退いていくが、逃げ出すわけにもいかない。 「早く済ませといたほうが、出勤時間まで休めるだけマシだぞー」 職員はゆっくりたちのために忠告してやる。比較的ゆっくりが好きなのでゆっくり清掃所に就職した彼は「愛でお兄さん」である。 きちんと社会におけるゆっくりの活かし方を知っており、できることなら『アレ』を使いたくない優しさを持っている。 「あ、あでぃずぅ……」 ゆっくりたちの中で泣いてるれいむがいた。 「あー、このありすお前のつがいだったのかー」 「は、あ゛い゛い゛い゛い゛い゛い」 職員はゆっくりが好きなだけに、同情してやる。 ゆっくり清掃所で生きているような管理されているゆっくりにはすっきり制限などはされていない。 というよりも、むしろゆっくりたちが勝手に繁殖することについては推奨していると言ってもいいほどだ。なので彼らの中でつがいは珍しくもない。 「じゃあ、お前が最初に食ってやれ。お前のあんこにしてやれ、な。臭くてゆっくりできないだろうが、きっと今のありすも臭くてゆっくりできないだろ? だから、お前の中でありすもゆっくりさせてやれ」 と優しく言ってやる。 ほとんどマニュアル化しているが、同僚の死については「死んだ本人も臭くてゆっくりできないから、食ってゆっくりさせてやれ」という説得で、死体を自主的に処理させられるようになっている。 「あ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛、あでぃずううううう」 とありすの死体に飛びかかるれいむ。 「ぐざいあああい、ぐざあああい、むーしゃむーしゃ、じばあぜえええええ、あ゛でぃずうううう、でいむのながでゆっぐりじでいっでねえええええ」 泣きながら食べ始めるれいむを見て、職員は周囲のゆっくりに目配せする。「お前らも食え」と。 れいむだけが食ってしまえば、とてもじゃないが腹一杯になってしまい、清掃の効率が落ちてしまうのだ。 全員で死体処理を分担させるのが職員としての仕事だ。 もたもたしていると、ありすのカスタードとゆっくりできない仕事によって蓄積されてきた甘味に夢中になっていくれいむがみんな食べてしまうだろう。 職員は腰に差した棒に手をかける。その途端にその場に居る50匹ほどのゆっくりたちが一斉に、 「「「「「「「ゆぎゃああああああああああああああああああ!」」」」」」」 と悲鳴をあげてありすの死体にむしゃぶりつこうとして押し合いへし合いする。 「あー、おちつけ。『ぼうさん』は出さないから落ち着いて食え」 と言った途端に沈静化するほど、職員が腰につけている棒状のものの威力は絶大である。 この単純に『ゆっくり棒』と呼ばれている長さ1メートルほどの金属製の棒は、ゆっくりに関わる仕事をしている人間なら誰でも持っているゆっくり用の基本装備とも言える棒だ。 普段は芳香剤つきの革製の鞘に入れられている『ゆっくり棒』はその先に古くなった加工所のゆっくり加工機械の廃材を原料とする金具が取り付けられている。 一日数千匹のオーダーで処理されていく加工所のゆっくりたちの『死臭』───現在ではゆっくりたちの糖の残留成分がゆっくりの餡子脳を刺激することによって、生きているゆっくりに死んだゆっくりの死ぬ直前の記憶を再生させてしまう現象を指す───が数年分蓄積されている金属である。 これをより死臭が強く拡散するように薬剤、熱などの処理を行ない、形状をそれぞれのメーカー独自のノウハウによって加工することによって製造される。 これだけでも半径5メートルのゆっくりたちが再生される壮絶な記憶により破裂即死し、半径50メートル以内のゆっくりが精神的な圧迫により餡子を吐き始めるという代物だ。 ドスまりさでさえ触れただけで即死するという、ほとんどゆっくりに対する最終兵器とも言える道具なため、虐待鬼意惨にはかえって人気がないとまで言われる威力の棒だ。 しかし、この『ゆっくり棒』の普及により、ゆっくりによる農業や食品産業の被害はほぼ皆無となり、また社会によるゆっくりの管理が一気に進んでいったという。 このため、人によっては「加工所の最大の役割はゆっくり棒の材料供給である」と言われるほどだ。 ちなみに、使用される金属の素性により威力は異なり。 最高級品である「中枢餡処理ライン」を原材料とし、専門の『ゆっくり棒』職人によって作られた一品物は「ユックリスレイヤー」と呼ばれ、厳重に加工所で管理されているという。 その威力たるや鞘ごと持ち歩くだけでも半径100メートルのゆっくりたちが破裂して死ぬ、という都市伝説があるが、その真偽を確かめた者はいない。 ただ、ゆっくり被害が酷かった地域で、野良ゆっくり飼いゆっくりの区別なく、地域一帯のゆっくりが全滅したという事件が起きたりするのも事実である。 常に証拠も発見されなければ、そもそも司法もゆっくりの死など、飼いゆっくりが加わったとしても熱心になるはずがなかった。 「加工所に通報するぞ」 というのはゆっくりだけでなく、飼いゆっくりの飼い主、ゆっくり関係の産業など、ゆっくりに携わる人間全てが恐れる事態であり、ゆっくりの管理は各地域の人間たちの義務と責任でもあるのであった。 ゆっくりとともにあるためには、厳重な管理が必要なのはむしろ当然という時代であった。 やがてありすの死体も容器の『ゆーぽん』も跡形もなく舐め取られていく。 「あー、出勤時間までゆっくりしてていいぞ」 職員はゆっくりたちにそう声をかけてやる。 「お前ら。今日もゆっくりしていってね」 「「「「「「「ゆっくりしていってね」」」」」」」 ※ うつむき加減で卑屈にずーりずーり歩いて行く出勤後の清掃ゆっくりは本当に存在感がない。 彼らは街路樹の枯葉、捨てられたゴミ、動物やゆっくりの死骸と糞などを口に入れ、消化できるものは食べてしまう。 金属やプラスチックなど消化できないものは、胴回りに付けられたビニールのゴミ袋に入れていく。 その全てはゆっくりできない味や臭いや食感であるが、ある意味、口当たりの良い『ゆーぽん』で飲み込めるが、あとでのたうち回る各種薬剤の毒性に比べたら軽いものでしかない。 それにどうしても飲み込めないものはゴミ入れに入れてしまえばよい。 虐待目的ではなく清掃目的であるから職員たちも無理に飲み込ませることはないのだ。 だから清掃中のゆっくりたちは静かだし寡黙である。 物を飲み込む時の、 「むーしゃ、むーしゃ、ふしあわせー」 段差や坂などにのぼったときの、 「おそらをとんでるみたい」 という中枢餡に刻まれた本能的なセリフについては口を出してしまうが、それすらも小声だ。 ゆっくりたちの甲高い声による騒音について少しでも気に入らなければ、お飾りに付けられた認識札の電話番号宛に通報が入る。 またサボっているゆっくりが見つかっても同様だ。 通報は実に簡単にお飾りの認識札にあるバーコードや磁気コードを携帯電話かスマフォで読み取れば、担当職員のところに認識番号とともにゆっくりの個体レベルで特定された通報がメールされてしまう。 通報の内容についてはガイダンスに従い番号入力だけで「騒音」「職務怠慢」「通路妨害」「盗難」「単独行動」「その他」などの罪状も添えることもできる。 もちろんその通報がいたずらで行われることも依然として多い。最近特に多いのは、ゆっくり用スマートフォンなどを持った飼いゆっくりによる気まぐれな通報だ。 だが、それについての真偽が問われることはない。 通報されたゆっくりは即座に営業所内にある「回収箱」送りとなり、一週間に一度ゆっくりの補充にくる加工所行きになるだけである。 清掃ゆっくりなど使い捨ての存在でしかないのだ。 あまりにも通報量が多い場合は、連帯責任で班ごと全回収となることも珍しくはない。 そのためゆっくりたちは人間が管理していなくても相互で監視しあっている。 清掃ゆっくりたちが担当地域に連れられたあとほぼ自由行動をさせるているのは、社会的な管理通報体制の完備と、ゆっくりたちの相互監視、そして一切の情の挟まれない加工所処理への恐怖によるものだ。 「んーしょ、んーしょ。とれてね、がむさんはゆっくりどうろさんがはなれてね」 と支給されたアイスの棒によく似た形状のヘラを使い道路にこびりついたガムを削り落とそうとするゆっくり。 ゆっくりにとっては重労働だが、前述したようにどこに人間の目が光っているかわからず、二匹から五匹の班行動を義務付けられているゆっくりたちの相互監視により、彼らは実に職務に忠実である。 それでも清掃ゆっくりたちたちは、まだ人間社会の目の見える職場で働いているだけ幸せだろう。 「おにーさん、あまあまおみずさんごーくごーくしたら、ごみさんちょーだいね」 道端をスポーツドリンクのペットボトルを飲んでいた少年に、れいむ二匹の清掃チームが声をかけた。 あまあまに関する嗅覚は彼らの本能だ。 かなり正確にスポーツドリンクを飲みおえた様子を見つけたれいむたちは、目を輝かせて少年を見上げる。 少年の方も虐待趣味はない。 また、M市ではゴミのポイ捨てが許されていても決して街がゴミだらけにならない理由は、彼らがたちまち片付けてしまうからだということは、今となっては社会の常識だ。 「ゆげぇ……いぬさんのうんうんはゆっくりできないいいい……ぐざあああい、ぐざあああい」 その向こうではまりさが出したてのほやほやの犬の糞を、必死でまだ柔らかく体温の残る犬糞をヘラで持ち上げ、ゴミ入れに入れようとしている。 「ほら、まだ少し残ってるぞ。あっちのまりさにも舐めさせてやりな」 と一口だけ残したスポーツドリンクのペットボトルを少年はれいむに渡してやる。 「ありがとーおにーさん!」 嬉しそうにペットボトルをうけとったれいむたちは、まっさきにまりさの方に向かっていく。 「まりさー、にんげんさんからあまあまなおみずさんもらったよ! がんばってうんうんさんかたづけて、みんなでぺーろぺーろしよっ」 彼らはトリオでこの周辺を見回っている。 清掃ゆっくりたちは、ほとんど無償で加工所から払い下げられるゆっくりたちで、その餡質も悪く、教育も受けているわけでもない。 だが、加工所出身だけに臭いだけでも瀕死になる加工所の地獄を骨身に沁みている。 あっさりと同僚たちが回収箱行きになる光景を餡子の隅々まで刻み込まれるほどよく目にしている。 さきほど相互監視と表現したが、ほとんどのゆっくりたちにとって、厳しすぎる人間社会において生き残るために否応なしに助け合うようになる例は比較的多い。 そうした関係からつがいになり、夜中のうちに感情が盛り上がってしまった末にすっきりをしてしまう例も少なくない。 当然、妊娠率ほぼ100%を誇るゆっくりのことであるから、子供ができてしまう。 しかし、植物型、胎生型を問わず妊娠したゆっくりが仕事を休ませてもらえるなどということは、天地がひっくり返ってもありえない。 額に実ゆっくりをぶら下げたり、腹の中に胎児ゆっくりを抱えたりしながらも、妊娠したゆっくりたちが通常業務を怠ることは許されない。 簡単に落ちる実ゆっくり、ちょっとした衝撃で死んでしまう胎児ゆっくりを、なんとか守りながら働き続けるのだ。 もちろん、事故、単なる人間や動物・飼いゆっくりたちの気まぐれ、与えられる『ゆーぽん』の毒性、自然環境からのストレスなどでめったにその努力が実ることはない。 ほとんどの場合、妊娠したゆっくりとそのつがいは、死んだ「おちびちゃん」をゴミとして自分たちで処理することになる。 それでも極稀に無事に赤ゆっくりとして誕生する「おちびちゃん」も存在する。 だが、赤ゆっくりが生まれたからと言って、なんらかのケアがされることは、当然ない。 毎朝の栄養補給の『ゆーぽん』や夜のエサに殺到する成体ゆっくりたちに巻き込まれれば、赤ゆっくりなど即死だ。 しかも、成体ですらのたうちまわり、時に死に至る含有された薬剤に赤ゆっくりが耐えられるわけがなかった。 もちろん「おちびちゃん」のために仕事中にエサを探すなど許されるわけがなく、怠慢姿勢が見られたら即回収箱行きだ。 そのため彼らは乏しい栄養状態の中から、自分の餡子を赤ゆっくりに吸わせることによって子育てを行う。 だが、自分たちの皮を傷つけて餡子を露出させる行為は、ゆっくりにとっては内臓を食わせるような行為であり、傷口を塞ぐ薬も朝の毒性にのたうち回りながら摂取する『ゆーぽん』ぐらいしかない。 また、自分の赤ゆっくりを連れ歩きながらの清掃作業は母子ともに負担となり、簡単な事故、栄養不足、厳しい自然環境などにより、やはり簡単に赤ゆっくりは死ぬ。あるいは母子ともに衰弱して死ぬ。 清掃局の人間たちはゆっくりたちが番を作ることもすっきりすることも制限したりはしない。 だが、一方で一切の支援も行わない。 それでも、極めて稀な例として働けるぐらいにまで育った子ゆっくりを同じ班で一緒に働かせてるやる程度にはゆっくりへの優しさはあるのであった。 自分のつがいやおちびちゃんたちと共に働き、生活できるというのは、ゆっくりたちにとっては極めてゆっくりできる行為であり、それはゆっくりであるかぎりどんなに渇望しても滅多に叶えられることのない夢であった。 ゆえにゆっくりたちは微かな希望にすがり極めて確率の低い賭けに出る。 そうして損耗するゆっくりの数は決して少なくはないが、彼らの勤労意欲を物欲や人間への恐怖や敵意などを煽るリスクなしで向上させることができるのだ。 どうせ清掃ゆっくりなどローコストでいくらでも補充される。 「おくちのなかがくさいくさいなのぜ……」 「まりさ! ぺーろぺーろするといいよ」 「ゆっくりぺーろぺーろしてね」 ゴミ箱を探さなくてもいいのだから、三匹で人間一口分のジュースの報酬ぐらい与えてやってもよいだろう。 ただし、明確な形での「ご褒美」や「謝礼」としてゆっくりたちに「あまあま」や食べ物を与えることは、「ゆっくり管理の阻害となりますのでお断りさせて頂きます」と広報されているためできない。 少しでも感謝している態度を見せようものなら「にんげんたちをゆっくりさせてやってる」と解釈し増長するのがゆっくりというものなのだ。 もし計画的にそういう行為を行なっていれば、損害賠償を求め訴訟沙汰も清掃会社は辞さない。実際、「例の理論」が発表されたあとに壊滅的な打撃を受けたゆっくり愛護団体の残党が、清掃ゆっくりの餌付けなどを行なっていた件で損害賠償を請求されたという事件が起きている。 裁判となった末、清掃局側の全面勝訴となった上に、すでに「財産権への侵害」以外での処罰を行うべきという法整備の検討されなされるようになっている。 今やゆっくりとその管理は社会を円滑に動かすための重要な部品なのだ。 「ぺーろぺーろ、しあわせー!」 「おいしーね、まりさ!」 三匹は順番にペットボトルのジュースを舐めあっていく。その間も一匹だけは必ず清掃作業を続けている。 一班全員で休もうものなら、どこで通報されるかわからないのだ。 「じゃあな、ゆっくり。ゆっくりしていってね!」 と少年はきちんとゆっくりたちが働いているのを確認して最後に労ってやる。 「「「ゆっくりしていってね!」」」 彼らの餡子の一番奥に刻まれている三大欲求以上の生存理由とさえ言える言葉のやりとりによって、彼らの餡子は賦活する。 今日一日は、これだけで元気に働いてくれるだろう。 そもそも彼らは「清掃ゆっくり」の中でも恵まれたほうなのだ。 一番多い清掃ゆっくりは企業や公的施設などに配置され、ひたすら消毒薬と洗剤を口に含みながら便器を舐め続けて清掃し続ける便所掃除用の清掃ゆっくりなのだから。 ※ 街を回るゴミ回収のゆっくりたちや、清掃ゆっくりたちが集めたゴミは、「分別所」と呼ばれる場所に一旦集められる。 M市郊外にいくつもある分別所だが、地方都市なために広大な敷地が贅沢に使用され、田舎の高校の体育館ほどの大きさの屋根と周囲を取り囲む壁がゆっくりたちを外敵と雨風から守っている。 「おーらい、おーらいよ……むきゅ」 「おーらい! おーらい!」 ゆっくりたちが背負ってきた「ごみさんおみこし」が一列縦隊で順番に広場に集められ、順慎重に中身が集められる。 まったく分別されていないゴミたちは、何が入っているかわからずゆっくりたちにとっては危険物となるものも多い。 この分別所で主役となるのはぱちゅりー種だ。 体も精神も耐久力の弱いぱちゅりー種は、中身が生クリームであるため食用としての需要も高いが、比較的知能も高いため分別所では、指揮と分別指導の役割を担わされている。 がらがらと盛大な音を立ててゴミの山が築かれていくが、その過程に巻き込まれて死んでいくゆっくりも少なくない。 ぱちゅりーたちはいちいち声をかけて注意していくが、存在自体が死亡フラグと言われるゆっくりが、その程度で死なないわけがない。 人間たちの分別の手間を省くために無造作につめ込まれた「ごみさん」たちの山は、周囲に耐え難い悪臭を放つが、郊外で周囲に人家はない土地に分別所は作られる。 ゆっくりたちはそこで生まれ育ったものが大半であるため鳴らされてしまっている。 この「分別所」には1000匹ほどのゆっくりが生活しているが、その詳しい数は把握されていないし、人間たちは把握する気もない。 市役所から派遣された3人ほどの管理人が、ゆっくりたちの分別作業の進捗状況について監視しているだけだ。 もちろん、彼ら一人ひとりが「ゆっくり棒」を腰に刺しており、いつでもその気になれば1000匹以上のゆっくりはたちまち駆除される。 「むきゅ、けさのぶんはこれであつまったわね」 分別所の総リーダーであるぱちゅりーが、ひと通り持ち込まれたゴミと「ごみさんおみこし」とトラックで持ち込まれたコンテナを確認する。 分別所の指導指揮用ぱちゅりー種たちだけは多少のコストがかかっている。 彼女たちを養成するために、一匹の金バッジクラスのぱちゅりーが必要とされる。 加工所ではなくゆっくりブリーダーによって大事に育てられた金バッジクラスの知能を持つぱちゅりー。 これに子ゆっくり時代から教育用のケージに栄養剤を点滴しながら徹底的にごみの分別と作業管理のみを教育し、それ以外の行動を一切させない。 食事も睡眠も排泄すら許さないまま24時間体制で「教育」が続けられる。 こうして教育というよりも一方的な情報の入力と言ったほうが良い工程により金バッジぱちゅりーの生クリームのほぼすべてがゴミの分別と分別作業管理の情報体となる。 だが、もはや生命体としての自律行動さえ不可能になるほど生クリームの組成を作り替えられたぱちゅりーが、実際の作業に使えるわけがない。 この金バッジぱちゅりーは完成後、ただちに解体され、情報体となった生クリームを加工所で生産されたぱちゅりーたちに注入する。 デタラメ不思議饅頭のゆっくりの記憶や学習は、中身の餡のゆ糖と呼ばれる八炭糖(オクトース)の組成によるものであり、これらは物理的なやりとりができる。 このように、ゆっくりたちの記憶や学習は餡の注入や交換によっていくらでも操作可能であることが判明したのも、ゆっくりたちの管理や利用法が確立される大きな助けとなった。 こうして1体の金バッジぱちゅりーを消費するごとに約50体ほどのぱちゅりーが、生クリームを注入されることによってごみの分別作業の指揮がとれるほどの学習をした状態にできるのである。 こうしてパチュリーたちの指揮の下、生ごみ、食用油、ゆっくりゴミ、生きびん(リターナブルびん)、雑びん(透明)、雑びん(茶色)、雑びん(水色)、雑びん(緑色)、雑びん(黒色)、容器包装プラスチック、ペットボトル、雑誌・その他紙類、燃えるゴミ、スチール缶、アルミ缶、ダンボール、布類、破砕・埋立、なべ・釜類、電気コード類、蛍光管・電球類、新聞・チラシ、乾電池類とM市が定めた基準によって分別される。 M市では一般家庭が排出するゴミの量は一日あたり約100トンほどである。M市には30箇所ほどの分別所存在し、それぞれ約1000-2000匹ほどのゆっくりたちが作業を行なっている。 このうち、生ゴミと食用油とゆっくりゴミ、燃えるゴミの一部が分別所のゆっくりたちの食料となる。 極めて脆弱なゆっくりたちにとっては分別作業は極めて危険な作業だ。 「ゆぎゃあああああ! あんよがあああ、いだい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛、どっで、どっでええええ!」 「でいむもふんじゃっだあ゛あ゛あ゛あ゛あ、い゛だい゛い゛だい゛」 「まりざのてんくうをかけるぺがさすのようなあんよさんがああああ!」 誤って蛍光灯を落としてその破片を踏んでしまったまりさがのたうち回ることでさらに破片を全身で回収してしまっている。 びったんびったんと暴れるまりさに巻き込まれ、隣にいたれいむも蛍光灯の破片を踏んで皮を傷つけてしまっている。 「ああならないように、きをつけてはこぶのよ!」 「「「ゆっくりりかいしたよ!」」」 指導役のぱちゅりーが反面教師としてもみあげで、餡子を撒き散らしもはや跳ねまわる体力も失われのーびのーびして痛みから逃れようとするまりさとれいむを指す。 誰も助けようなどとは考えない。 さしてめずらしくもなく毎日のようにおきる事故である。 回収されたゴミのほとんどは、脆弱なゆっくりたち傷つけ殺す、重さ、硬さ、鋭さなどを持っている。 驚くほど簡単にゆっくりたちはこの作業で傷つき、餡子と命を撒き散らしていく。 だからといって人間がごみを加減するわけがないし、処理しきれないくなっていけば、すぐさま彼らは連帯責任で加工所行きだ。 そしてまた別の「運が良い」ゆっくりたちが処理用ゆっくりとして加工所から送られてくる。 だから精一杯生きるために彼らは慎重に、指導役のぱちゅりーから作業のコツを教えてもらいながら、力を合わせてごみの分別作業を行なっていく。 「ゆーしょ、ゆーしょ」 「ゆげぇ、これどぐづいでるうぅぅぅ」 「ゆっ、まりさ、おさげじゃなくておくちでくわえるんだよ」 だいたいの作業はゆっくりの舌と口を使って行われる。 汚物、酸、塩分、味、匂いなどを嫌っておさげやもみあげを使おうとすれば、力も精度も足りずによくておさげやもみあげが切れることになる。 たいていの場合は前述のまりさのように事故に遭い死ぬ。 少しでも作業精度を上げて死なないために彼らは舌と口でごみの分別作業を行うのである。 人間が見ていればその手際の悪さにイライラするような緩慢さであるが、ゆっくりたちはそれでも数時間かけて作業を行なっていく。 炎天下の夏や冬の日などはゆっくりたちは暑さ寒さにって自然死してしまう数が増加するが、さすがにそういう日は『ゆーぽん』が管理人の手で噴霧されるときがある。 朝の回収時間の分別が終わるのはだいたい午後になってからだ。 「むきゅ、かんりにんさん。あさのおしごとはおわったわ」 分別所のリーダーぱちゅりーが部下たちの報告を受けてマスク姿の管理員に告げる。 このぱちゅりーだけは「分別所」の外にある管理員の詰所に来ることを許されている。 報告を聞いた管理人はいつものように各コンテナに分別されたゴミを回収にくる業者に連絡する。 こうしてリサイクルできるものはリサイクルされるし、完全な廃棄物については、それぞれの分野に特化改造された処理場ゆっくりによって餡化される。 ゆっくりたちの数に任せた分別作業は一匹一匹の作業そのものは取るに足らない。 だが、一日二回に分けて各家庭、アパートごとに回収していくことと、コストが極限まで抑えられる上に、一箇所につき1000-2000匹というオーダーで命がけで行われるため、馬鹿にできない分別精度と効率を実現している。 実際、M市においてはゴミ問題はほぼ解決している上に、各家庭でも「ゴミの日」などに気を使わず、ゆっくりたちに出たゴミを任せれば済むのが大きかった。 現在ゆっくりにゴミの処理だけでなく分別にも使用するという試みはM市での成功を受けて全国的に広まろうとしている。 都市部では土地の利用が難しいとされているが、地下化や高層化、密閉型などさまざまな形式が検討されているという。 ちなみにさらに厄介な産業廃棄物については、前述した処理場ゆっくりの話となる。 「おー、ごくろうさん。今日もがんばってたな」 全身を作業服にマスク姿というのは、匂いや危険物に対する対策もあるが、一番の理由はゆっくりたちに個体識別をつけさせないことにある。 ゆっくりたちは人間たちの力関係を驚くべき嗅覚で把握する。 もし誰かが誰かに頭を下げているのを目撃されたら、「あのにんげんはしたっぱだよ」と自分たちとの力関係については考えずバカにした態度に出る者も少なくないのだ。 そもそもすぐ死に至る仕事と簡単に加工所行きとなる恐怖によって締め付けられているだけで、知能も教育も劣る量産品しかいない。 もちろんそんなゆっくりは問答無用で加工所行きであるが、管理人たちもまた多くがゆっくりが好きでこの仕事をしている者が多いし、また無駄に損失を出す必要もない。 管理人たちはやがて、ゆっくりたちに個体識別をつけさせず、みんな平等に「かんりいんさん」として恐怖され畏怖され感謝される存在であることが、もっともゆっくりたちのためであり自分たちのためであることを考えてこのような姿でいるのであった。 「んー、ぱちゅりー。今日はなにがいい?」 管理人はやさしく聞いてやる。ぱちゅりーは少し考えて、 「きょうはちょこれーとさんにするわ。りくえすとがいちばんおおかったの」 と答えた。一番安いお徳用のチョコレートをひとつかみリーダーぱちゅりーの特権である腰につけた「ぽしぇっとさん」に入れてやる。 毎日、りーだーぱちゅりーには作業が滞り無く完遂させたご褒美として、ゆっくりたちが求めてやまない「あまあま」───格安のチョコレート、キャンディー、クッキーなど───を一掴みほど与えてやる。 この「あまあま」の使い方については、いくつかの例を教えてやるだけで、基本的にリーダーぱちゅりーの裁量に任される。 非常用や医療用として貯めこむぱちゅりーもいれば、毎日作業のはかどった者の賞品とするものもいる。 部下の指導役のぱちゅりーたちに与えて裁量に任せる者もいる。 それぞれの使い方によって作業効率は微妙に異なったりもするが、許容範囲であればこのあたりはゆっくりたちの自治に任されている。 ちなみに、ぱちゅりーのおぼうしと髪の色によく似合ったピンクの革製のポシェットは、元々はとある分別所のゆっくり好きの管理人が、担当のぱちゅりーにつけてやったものであった。 だが、それにより作業効率の向上やゆっくり損耗率の低下という効果があったため今では全分別所で採用されている。 どうもゆっくりたちには、このぽしぇっとは「すごくゆっくりしている」ものに見えるらしく、リーダーぱちゅりーたちの指導力と権威を高める効果があるようであった。 またこの中に先ほどのような褒美の菓子や、対ゆっくり用の武器、医療用のオレンジジュースの小瓶などが入れられている。 「チョコレートは溶けやすいから早く食えよー」 「むきゅ、きょうはしょうきんさんにつかうわ」 そう言ってぱちゅりーは 中では次の回収に備えて、ゆっくりたちの食事を兼ねた生ゴミ・ゆっくりゴミ・燃えるゴミの処理が行われている。 彼らにとってはほぼ食事は地獄だ。 「がーつ、がーつ、ゆぐぅえええええええ、すこしどくはいっでるううう」 「まじゅいよう、まじゅいよう、でいむおいじいものだべだいいいい」 「むーしゃ、むーしゃ、ふしあわせのさんばいー」 「にぎゃい!にゃにごれえええええ」 「ゆぎゃあああああああ、からからざんだああああ、いだぃぃぃぃぃぃぃ」 生ゴミの匂いだけではない。腐った酸味、なにがなんだかわかったものではない苦味、人間も食えなくて残したであろう強烈な塩味、そもそも食べ物の範疇ではない燃えるゴミ、そしてゆっくりたちの死骸やうんうんなどを必死で口の中に入れては飲み込んでいく。 好き嫌いなど許されない、目の前にそれぞれ自分たちに分けられた「のるま」をすべて消化せねば仲間たちで「せいっさい」である。 もちろん「せいっさい」などで殺してはもらえない。全身を痛めつけられて結局は周囲によって倍以上ののるまを口の中に詰め込まれるだけなのだ。 そもそも毎日の過酷な作業により餡子が欠乏してしまっているために、なんとしててでも口に入れて自分の餡を補充せねばならないという、生存本能がいつでも全開に作用しゆっくりたちの空腹感を煽っているのだ。 消化したら「おといれ」に走ってうんうんとして出して、また食べなくてはならない。 朝の処理は次に夕方の回収が控えているため、食事処理の時間は決められているのだ。 「あっ、あまあまだよ!」 「あまあま?」「あまあまちょうだいねちょうだいね」「あまあまはゆっくりできるよ!」「ばりざのものだあああああああ」「わがらないよおおおおお」「でいぶにじあわぜざぜろおおおお」「あまあまあまあまああああ!」「ぐるなああああごれはありずがみずげだのおおお」「でいぶのものだよ!」「さいっきょうのまりさにこそふさわしいんだぜ!」「みょんによごぜえええええ」 極稀に甘味が人間が捨てた生ゴミの中に含まれているときもある。その時はさらに地獄絵図だ。 食事時で理性が失われているゆっくりたちの自制はたちまち崩壊し、あまあまの取り合いで殺し合いが起きる。 こればかりは指導役のぱちゅりーたちも手に負えないし、いちいち管理人たちもこんなことで介入したりもしない。 夕方の回収時間までほぼこの繰り返しであった。 ※ ゆっくりが人間社会に登場してすぐのころの人間社会の混乱は、ひとえに「ゆっくりとはなんなのか?」という正体不明さによるものであった。 生物としての概念をあらゆる意味で超越した所に突然現れたこの不思議饅頭は、脆弱な肉体と自分たち以外のあらゆる存在に敵対しようとする極めて不可解な精神を有していた。 特に彼らは好き好んで人間たちの家屋におうち宣言を行い、人間たちを見下し、畑を荒らし、ゴミ袋を漁り、ところかまわず糞尿を撒き散らし、性行為を行い、そのことごとくに人間たちの怒りを誘うセリフを実況するという極めて理解に苦しむ言動を行なう。 この奇妙な存在は、いったい何をしたいのか?人間にとってどういう存在なのか? 中には『善良』とされる個体やペットとして可愛がられるゆっくりなども現れ、その混乱に拍車をかけていく。 ある者は存在自体を駆除しろと主張し、ある者は虐待しがいのある存在として喜び、ある者は人間のパートナーになるべき存在だと認識し、ある者はただ盲目的に愛護しようとし、ある者は商用利用の道を考え、ある者はただの饅頭として扱おうとした。 それら一致しない人間たちの態度が、ゆっくりたちが絶滅する前に社会に蔓延り、増長する要因となっていったと後世では分析されている。 なぜなら、後の研究でそれらすべてがゆっくりたちが存在し行動する原動力となっていることが判明したからだ。 『十炭糖生命理論』 とある生化学研究者によって発表されたこの理論を嚆矢とするゆっくり研究の末、ゆっくりの生態とその行動原理がほぼ解明され、人間たちはついにゆっくりたちに対処するための統一見解を持つ至る。 それまで人間たちが発見していた九炭糖とはまるで組成の違う新発見の糖分、十炭糖『デカトース』こそがゆっくりの生態と行動律のすべての原動力であった。 ゆっくりは、彼らが生成する餡の中に含まれるデカトースを燃焼させるエネルギーによってすべての行動を行なっている。 さらにデカトースにはゆっくりの体内で糖分同士が複雑なニューロンにも似た組成ネットワークを築き上げるという性質を持っており、その糖化ネットワークと電気信号がゆっくりたちの知能や記憶などを司っているのである。 そのデカスートネットワークの中心でありオクトースの塊となるのが「中枢餡」である。 ちなみに比較的体内の餡にオクトースが少ない辛味のゆっくりであるめーりんが「じゃおーん」としか喋れないのは、言語中枢を司るデカトースのネットワークが不足しているためである。 また、このオクトースは極めて強固な糖分であり、彼らは糖分を酸化させることによって極めて強力な酸を口内と体内作り出す。 これはゆっくりたちの糖化ネットワークの司令によって行われるが、酸化した糖分はそのままうんうんやしーしーとして輩出せねばならないため、消費は最低限に抑える必要がある。 ゆっくりたちが『食べ物』として認識できないものを消化できず、また美味い不味いについてうるさいのも、彼らは自分の体内のエネルギーや記憶や知能の源泉となる糖分を消費して消化を行わねばならないためであった。 彼らにとっては消化して糖分にしやすいものが『美味しいもの』であり、その極限が糖分である『あまあま』になるのは当然であった。 彼らにとって『あまあま』とは直接取り込めるエネルギーであり、体を作る餡の主成分であり、知能と記憶のもととなる糖化ネットワークの原動力である。彼らがほぼ例外なく全身全霊をかけて『あまあま』を求めるのも無理はないのである。 そして、人間たちにとって彼らの扱いを決定づけたのが、ゆっくりが昔から言われているように「ゆっくりは虐待されれば虐待されるほど甘くなる」という現象の解明であった。 これは実に単純な話で、ゆっくりたちにとって「ゆっくりできる」という状態は体内の糖分をひたすら消費している状態なのであった。 ゆっくりたちは虐待やストレスや運動そのものなど「ゆっくりできない」状態に置かれれば置かれるほど、中枢餡を中心した糖分ネットワークが活性化してデカトースを精製する。 このためゆっくりは「ゆっくりできないほど甘くなり」、かえって生命力やエネルギーを増していくのだ。 つまりゆっくりたちは当人たちの主観では「ゆっくりできない」状態に置かれることによって生命維持をしているのである。 これによって長年の人間たちの疑問であった「ゆっくりたちはどうして危険や死亡フラグを招き寄せるような行動を人間や動物、大自然に対して行うのか?」という不可解さが解明される。 彼らは本能的に自分たちで望んで「ゆっくりできない」状態に陥ることによりデカトースを作り上げ、その糖分によって活動のすべてをとり行い、体を作り、知能や記憶を形成しているのである。 いわゆる「餡子脳」と呼ばれるゆっくりたちの精神構造は、当人たちの主観とは別に完全な本能により自らを「ゆっくりできない」状態に追い込むために人間や動物を挑発し、さらにわざわざゆっくりできない場所へと飛び込んでいくのである。 完璧な飼育条件でかわいがっていた飼いゆっくりが、それにもかかわらずゲス化するのも、「ゆっくりした状態」が続いてしまうことにより彼らは存在そのものの維持が危機に陥っていくためであった。 今までどうしても解明されなかった「金ゲス」問題や「大事に育てていたゆっくりが野良や野生より先に死ぬ」という不可解な生態の原因がこれであった。 つまりゆっくりとは、知能や知識において必死で「ゆっくりする」ことを渇望しながらも、「ゆっくりできない状態」に追い込まれていないとエネルギー、体組成、知能、記憶などのすべてが維持できないという、矛盾を抱えた存在なのである。 『十炭糖生命理論』を提唱した研究者グループたちは、このゆっくりたちの生態の解明により全員がため息をついたという。 なんという悲惨な矛盾を抱えてしまった『生命』なのであろう? この『十炭糖生命(ゆっくり)』たちは……。 何度とない反証実験の末『十炭糖生命理論』が証明されて以降、まずゆっくりの愛護団体が全滅した。それもそうだろう、彼らが行なっている愛護活動こそが、ゆっくりたちの存在を否定しまうのだから。 そして、多くの人間たちは憐れみながら、全力でその保護と管理に当たったのである。 ゆっくりをゆっくりさせないために。 ※ 「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」 ゆっくりたちをゆっくりさせないための管理保護の中心となるのが、やはりこの加工所である。 どんなに他の場所でゆっくりできない状態に置かれているゆっくりたちも、未だに加工所だけは共通して地獄のように恐れている。 しかし、現在の『十炭糖生命理論』によって洗練された加工所では、それほど目新しい虐待行為を行なっているわけではない。 ただ、解明されていくゆっくりたちの生態にしたがって最も効率的な「ゆっくりできない状態」を作り出すかに特化しているだけの話だ。 ゆっくりの生態が解明されてみれば、ある意味これほどゆっくりたちに忠実に仕えている存在もないだろう。 現在、デカトースの精製に使われているゆっくり生産ラインの構造は単純である。 1000匹1セットのゆっくりをスプリンクラーで噴霧しているオレンジジュースの霧の中で成長させ、天井の無数のスピーカーで1秒間に3回のスピードで『ゆっくりしていってね!』という声を聞かせ続けているだけである。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ」 原種ゆっくりたちの頃よりゆっくりにとって最大の存在意義である『ゆっくりしていってね!』という言葉は、ゆっくりたちの中枢餡の奥底に染みこんでいる言葉である。 『ゆっくりしていってね!』と挨拶を交わすことはねもっとも大切な「ゆっくり」である。 この挨拶を交わすことによる「ゆっくり」は、「あまあま」や「おちびちゃん」や「すっきりー」以上のものである。 もちろん、この挨拶さえできないゆっくりは、すぐさま制裁されてもしかたがないというほどにまで、ゆっくりたちの存在そのものに染み付いたものだ。 加工所では、このゆっくりたちの最も重要な本能を利用して、1秒間に3回というゆっくりたちが認識できる最速のスピードで多数のスピーカーでエンドレスで呼びかけ続ける。 もちろん、ラインのゆっくりたちがそれに挨拶を返せるわけもなく、次々と返さねばならない「ゆっくりしていってね!」が彼らの脳裏に本能に刻み込まれていくのである。 ゆっくりたちにとって『ゆっくりしていってね!』と返すことが出来ないほど「ゆっくりできない」ことはない。 これが1秒間に3回のペースで、しかもゆっくりが認識できるスピーカーの数だけゆっくりの体内に刻み込まれていくのである。 単純な仕掛けであるが、これほど効果的なゆっくりに対する「ゆっくりできない」仕掛けはないらしく、加工所は常にさまざまな手段で虐待を行なってデカトースの量を計測しているが、現在のところ量産可能とするには最も効率の良い工法であると、デカトースの増加量で証明されている。 「ゆ? ゆっくり? ゆ? ゆっくち!」 生まれてからラインに投げ込まれたゆっくりたちは、最初懸命に挨拶を返そうとするゆっくりたちは、やがて「ゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆ」とひたすら最初の文字を連呼していく。 そのうち痙攣のように「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ」という音を発し始めるが、これは決して「非ゆっくり症」になったわけではない。 というよりも1秒間に3回という数字は「ゆっくりに非ゆっくり症になる余裕さえ与えない」ための速度であった。 つまり、ゆっくりたちは明朗な意識を維持しながら、噴霧された『ゆーぽん』の糖分と栄養によって生存を続け、成長し、体内のデカトース濃度を濃くしていくのである。 極限までゆっくりできない状態により急速に糖分を精製させるゆっくりたちは、赤ゆっくり状態から強制的に成長させられ、わずか1日で成体ゆっくりにまで成長してしまう。 このデカトース工法の強みは、極限まで突き詰めた「ゆっくりさせない」ことによる強制的な糖分精製が行なわれた結果、ゆっくりの成長促進作用という副産物も伴っていたことにある。 現在ではこの「ゆっくり生産ライン」は全世界的に普及している。 ちなみに清掃ゆっくりや分別ゆっくり、などもこの工程で成長させられたものばかりだ。 彼らは特に教育しなくてもこのラインで生まれたというだけで人間社会を天国に思い、なおかつ加工所の恐ろしさを餡子に刻みつけられている。 さらにもっとも「生産効率として有効」な3週間ほどを経過したゆっくりが遠心分離によってお飾りと皮を剥がされるラインに送られ、そのままデカトース由来のアルコールことバイオデカノールとして精製される。 ゆっくりを1日で成体として成長させてしまうほどの強力なデカトース精製を3週間も続けていると、ゆっくりたちの餡は餡と呼べないほど純度の高いデカトースとなっており、透明感すら帯びるようになってくる。 この透明感ある餡は1万倍に希釈してもゆっくりを、そのゆっくりできなさで死に至らしめるほどの純度の高いゆっくり忌避剤となる。 このような純度の高いデカトースから精製されるバイオオクタノールは非常に高い燃焼効率を持っており、現在ではほぼ全世界の自動車や発電の燃料として使用され、エネルギー問題の福音として評価されている。 また一部の貧しい国ではそのまま酒として売られることもあるようだが、現在のところ人体への害はないようだ。 さらに人間社会で問題を起こしたゆっくりが流される処罰ラインでは、ゆっくりたちは同じ工程を1年ほど通される。 ほぼ処罰と見せしめと「加工所への臭い付け」のために行われるこの工程の映像は、ゆっくりたちが働く現場では一つはなんらかの置いてある。 1年もたちともはや餡そのものが完全にデカトース化し皮さえも糖化してしまっている。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」とさえ言えなくなるまで餡が糖化した純粋なデカトースは透明であり、中央の中枢餡が気味悪いほどのスピードで蠕動しているのを見ることができる。 ゆっくりたちは本能で「ここまでされてもまだ意識ははっきりして、ゆっくりできないままにされている」ということを悟って、その映像だけでも気の弱いものは卒倒してしまう。 むしろ「処罰」が一年になっているのは、さらに糖化が進みすぎるとデカトース濃度が臨界を超えて発火を始めるからである。 透明化した「かつてゆっくりだったデカトースの塊」はデカトース分はゆっくりのゆっくり出来ない記憶を固めた存在となり、ゆっくりの極めて強烈な毒薬となり駆除などに使用される。 また道路や家屋などにも塗り込められゆっくりがごく自然に近づかないようにされている。 そして蠕動している中枢餡は天然成分のオレンジジュースのプールで生命維持をさせられ続け、1週間ほどで不純物やゆーぽんの成分やアクが完全に抜けたところで固められて厳重な検査の末に食用とされる。 生命維持用のオレンジゼリーの中に含まれたゆっくりの中枢餡は『罪と罰』という名前を付けられて売られているが、非常に高価で貴重なものであり、その甘味と口当たりはあらゆるすべてのスイーツの頂点とされるほどのものだという。 ただ、一つ欠点があるのは、これを食べてしまうと一週間ほどゆっくりたちにとっては死神そのものに見えるほどに「ゆっくりできない」においが漂うらしく、体質によっては近くに通っただけでゆっくりたちが餡を吐いて死んでしまうために、市販されていないという点だろう。 他にも加工所には赤ゆっくりたちを生産するラインやゆっくりたちのエサ作るライン、食用ゆっくりを生産するラインが存在するが、これらについては機会があったら語ることもあるだろう。 ※ 「むきゅ、きょうのおしごとはこれでおしまいね、みんなおつかれさま」 「「「「「「「ゆっくりがんばったよ!」」」」」」」 夕方の回収と分別を終えてリーダーぱちゅりーが終礼のようなものを行なっている。 もちろん、人間たちのように整列したしせず、また義務付けられているわけでもない。 ただ、リーダーぱちゅりーは終礼のときに、功績のあったゆっくりや、「おたんじょうび」(分別所にきて『たくさんのひ』ということだ)や、子ゆっくりをきちんとそだてることのできたゆっくりなど、いろいろな基準で人間から与えられた「あまあま」を配ってくれるので、自然に集まるようになっていた。 時たま、力づくでリーダーぱちゅりーの「ぽしぇっとさん」を奪おうとするゲスも現れることはある。 だが、ぱちゅりーは前述したゆっくり忌避剤を塗りこめた棒をいつでもポシェットから抜けるようにしている。 もちろん自分も非常にゆっくりできないので、出来れば使いたくない武器だ。 ちなみに管理人もできるだけ立ちあうように指導されている。まだまだ「分別所」については試行錯誤のまま運用されているため、トラブルも改善の余地も多いからだ。 「まりさ、れいむ」 「ゆっ! なんなんだぜ……」 どことなく元気のないまりさとれいむが現れる。 「あなたたちは、きょうがんばって『はばねろさん』をしょりしてくれたわね」 もちろんこういうゆっくりにとっての劇物とて容赦なくゴミの中に含まれる。 運悪く割り当てられてしまった二匹は、何度も死にかけながら、指導役のぱちゅりーに「ひとつずつ、つばをかけてから、ゆっくりとのみこむのよ」という教えを守って処理を終えたのであった。 「がんばったわね。よってごほうびにかんりにんさんにもらったちょこれーとさんをあげます」 「まりさおめでとーなんだねー」 「はばねろさんをたいじしさまりさはゆうしゃなんだみょん」 「れいむもがんばってたわ」 祝福をうけながらチョコレートを受け取る二匹。 「だいじにたべるのよ」 「ゆっ! まりさはたべないんだぜ!」 「れいむもだよ!」 とチョコレートをまりさのお帽子につめこむ二匹。 「まりさとれいむは、けっこんするのぜ!」 「おちびちゃんのために、あまあまはとっとくんだよ!」 と胸を張る二匹。 「むきゅ、こまったわ……ちょこれーとさんはとけやすいのよ」 困ったように教えるぱちゅりーにまりさが答える。 「ゆっ! とけてもぺーろぺーろすればいいんたぜ!」 「あー、ちょっといいか?」 びくっ! と条件反射的にゆっくりたちは上から聞こえた人間の声に振り向いた。 どの顔も恐怖に歪んでいるが、それはいつものことなので管理人は気にしない。 「チョコレートにこだわらんなら、こっちのキャンディーにしとくか? 紙に包まれているし少しは保存しやすいだろ」 と両側が捻られた紙に包まれたキャンディーをふたつリーダーぱちゅりーの前に置いてやる。 あくまでも管理人はリーダーぱちゅりーを通してしか物を与えない。これは絶対の服務規程でもある。 「まりさ、れいむ、このきゃんでぃーさんでもいいかしら?」 「まりさ、いいよね? このほうがおちびちゃんのためにとっときやすいよ!」 「わかったんだぜ、ぱちゅりー。このちょこれーとさんとこうっかんなんだぜ」 と二匹はリーダーぱちゅりーにチョコレートを返し、キャンディを受け取る。 その後もゆっくりらしい要領の得なさでありながらもなんとか終礼のようなものを終える。 「よーし、おつかれさん。これでお前らの仕事は終わりな。今夜もお前ら『ゆっくりしていってね!』」 「「「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」」」 と最後の挨拶をしめて、ゆっくりたちは一日の重労働を終える。 管理人はゆっくりたちの前から出ていくと厳重に分別所の扉を閉めていった。ガチャンと鍵の音がする。 この密閉される音で、むしろゆっくりたちは安心するのだ。 やっとゆっくりたちだけの時間がくる。 そして、彼らは初めて素顔を見せる。 それは道で見せる泣き顔をさらに強めた滂沱の涙だ。 「ゆええええええええん、ゆぇぇぇぇぇぇぇん」「ひっぐひっぐ……」「わきゃらにゃいよー、わきゃらにゃいよー」「とかいはじゃないわー、こんなのとがいはじゃないわ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」「ゆえええええええええん」 恥も外聞もなくゆっくりたちは泣きじゃくる。 幸せな生活の筈だ。加工所でのゆっくりどころかすべての生命活動が「ゆっくりできない状態」にされるための機械的なラインの上よりも、ぜんぜん幸せな筈だ。 人間たちは基本的にゆっくりにやさしい。 どの人間たちもゆっくりの生態を理解し、社会のためになる益獣として愛している。 ゆっくりが誕生して以来、ここまで人間社会にゆっくりが受け入れられ、愛されている時代はないだろう。 ゆっくりはその生態も存在もすべてが理解され、そしてその存在は人間社会の生態系の中にしっかりと組み込まれようとしていた。 「ゆっくりしていってね!」 今、人間社会はすべてがゆっくりたちに向かってそう言ってくれている。 そのことを誕生から成長から理解させれる仕組みの中に生き、そして死んでいく中にあってさえ、ゆっくりたちはどうしても人間たちが見ていない(と思い込んでいる)所では、恥も外聞もなく泣きたくなってしまうのだ。こんなにもゆっくりが受け入れられ、愛される時代であり、理解され尽くした社会であり、加工所にいた頃に比べたら幸せなのに、どうして泣きたくなるのだろう。 「「「「「「「「ゆぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん !ゆぇぇぇぇぇぇぇん」」」」」」」」 いつしか種にかかわらずその泣き声は一つになっていく。 それを聞いている夜勤の管理人は、ゆっくりたちがしっかりと生命維持の糖分を精製していることに安心しながら、防音について少し対策が必要だな、と報告書に記していくのであった。 「ゆっくりしていってね……、と」 ゆっくりたちが理論的に愛でられた世界で。
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「ゆっはははは~~~~~ッ!!! 働け働けぇ~~~~~い!!!」 収納部屋から容赦無い叱咤の怒号が縦横無尽に飛び交ってゆく。 今日も一人、また一人と収納部屋に入れられたゆっくりがぱたりと倒れ、力尽きてゆく。 「むきゅ、もう無理…」 「ゆ、お前ェ、倒れたなァ~~~~~! 今日のお前の飯は抜きだ抜きィ、だっははははは~~~~~ッ!!!」 「く、くそう…! まりさたちゆっくりに包装材のぷちぷちくんを潰させるという重労働をさせやがって、お前らには血も涙も無いのか!」 「ゆははは、寝言は寝てから言うんだなァ~~~~ッ!!! お前らの運命は我らが『世界ゆっくり協会』が握っているんだからなァ~~~!!!」 「うう、こんな時にパチュリーマンが居てくれたら…!!!」 『その願い、叶えるわっ!』 「…!? そッ、その声は!」 刹那、壁際についている窓から声が聞こえた。その窓の方向を向くと、そこには正義の味方の『彼女』が居た!!! 「待たせたわね…、皆!」 「「合金戦士・パチュリーマン!!!」」 打ッち切り ぷちぷちくんをつぶすのは楽しいけど、ずっと続けたら拷問だよね。笑った。 -- 名無しさん (2010-04-21 13 57 57) 名前 コメント
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これは聖人10人の活躍記録簿である なお、各ページの編集は自由である ゆっくり俺自身委員会とは? なりたち メンバー ゆっくり用語解説 走者の格言 オズボーンの迷言 雑談板 チャット 創設者日記 ─────────────────────────────────── コメントフォーム追加 -- 炉利娘 (2012-02-28 20 42 59) チャットのぱすわーどは『yukkuri』です -- 炉利娘 (2012-02-28 22 58 03) 名前 コメント
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休憩で入った深夜のファミリーレストラン。食べ終わった頃、彼女達はやってきた。 見覚えはないはずだったが、挨拶をされると自然に返してしまった。 向かいの席に、妙に恭しく頭を下げて座る。 「ジョシュア・デイボブア監督ですね?」 「突然の訪問、申し訳ない」 「はあ」 「今年度発表予定の 『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』 についてお伺いしたいのですが」 改めて見ると、片割れは東洋人だった。変に背が低いと思っていたら、本当に幼い。妙にウェーブもかかってボリュームも ある髪の毛のせいだろうか。 もう一人のショートの方は、随分と大人びていたが、やる気が無さそうだった。 二人とも、とても野暮ったいコートに、サングラスをかけている。 「あれ………ご自身ではどう思われます?」 「いや……最高傑作です」 これは堂々と言える。 Cartonn.netのゆっくりシリーズの脚本を手がけてかれこれ2年は経つ。ショートショートを専門に、最初は戸惑ったが何とか 続けてこられたし、劇場版が制作されるまでに至った。確かに、途中でトラブルもあったし、クレームもあった。 特に、「ゆっくりしていってね!!!」について深く調べれば調べるほど、実は表現には気を使わなければならない部分が あるという事も知った。それでも彼はスタッフと探求し、シリーズを続けた。 TVという媒体で、ゆっくりを扱うのは難しいが楽しかった。 「元々こうした長編の脚本が専門だったので、本領発揮と言いますか、今までの全てを詰め込んだ話にしているつもりです」 「なるほどなるほど。確かにあれは、よくできている」 いや………製作途中なのに、何故内容を知っている? 「確かに、あなたも思うところがあって長く続けられてきたんでしょう」 「ええ」 「キャラクターの下地はあっても、決まっている様で実は曖昧。そして何より、原作ストーリーが存在しない。なのに、 多く知られているキャラクターを使う。中々できることではありません」 「そこまで褒めてもらえると………」 流石に思い切り過ぎた事はできずに、元々あった2chのログや、まとめwikiという所から拝借して、それらしくストーリーを作ってた のが現実なので(元々5分間番組だし)、だから、この長編こそ、本当のオリジナルの第一歩と言える。 「それだけに、我々は困っている」 「また――その、公式が云々という話ですか?」 このシリーズ、明確な設定があまりないため、とにかく公共の電波で流すには、ハードルが高い。つまり、TVで放映する事自体が 表現の自由を狭めるという批判があり、設定は人それぞれ、という事は、それだけ違う価値観がぶつかり合う訳だ。 それは仕方の無いことなのだ ただ、その葛藤から色々なもの生まれる 寧ろ困ったのは、原初主義者というべきか、TVアニメでやる事自体がおかしいと抗議する声だった。中には、イラストなどに起す事 自体が間違っているという主張すらある。 穏やかに見せかけて、この二人もその手合いか? ならば話はできない。最初から前提が違っているのだから、まともに会話するのを諦める事を彼は覚えていた。 「まあ――――そういう事です」 「ならば話しは早い」 目付きに敵意はない。しかし、二人はしげしげと頷くと、悲しそうな顔で、おもむろに持参していたカバンに手を入れ――――中身を 装着した 「あ・・・・・・・・・」 「別に強烈なフリークとか、原理主義者とかではないです」 「まずは改めまして、こんにちは」 長髪の東洋人は、白いリボンが巻かれた、魔法使いの様な大袈裟な尖がり帽子。ショートの方は、赤いカチューシャ 作画担当も、一番のポイントだと言っていた。 「どうも、 ゆっくりまりさ です」 「ゆっくりアリス です」 ―――――単なるコスプレ女と思えばそれまでだが…………それが言えなかった。 気がつけば、店の中には誰も居ない。 何と言って、追い払おうかと思ったが、口に出せない。 いや、寧ろ、「ゆっくり本人」という言葉に真実味すら感じる 「――――大丈夫ですか、あなた達?」 「ゆっくりの事なら大体答えられます」 「まりさ と アリス に関してはね」 「――――それじゃあ」 彼も過去ログを読み込んできた。例えば、有名なAAがいつ頃何スレ目で生まれたとか、ある程度は答えられる――――が、 それを正確に、二人は即答した。 しかも、レス数まで 「整形アリス」や、「親不孝アリス」が作られたその場の流れまで、細かく語りすぎて、正直正解かどうかも言えない。 しかしこれは覚える事は不可能ではない。 そう言ったら 「信じられないのも無理はない。じゃあ、これはどう?」 イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ`! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノ i ! 'ー- レ' -― .Ti !ハノ ,' o !ヘ ,ハ !rr=- r=;ァ. イ/ i 〈 人間では無理だ。 ガタガタと震えながら席を立とうとする彼を、「ゆっくりアリス」は優しく両肩に手を置いて腰を下ろさせた。 しかし有無を言わせぬ力があった。 「あ、あんた達は一体………?」 「まあ、見ての通りの者ですよ」 「流石に、首だけでやってきたら驚かせますから、これは仮の姿です」 「で、相談がある」 既に、敬語ではなくなっていた。 「私に何をしろと………」 「日本人の作った言葉なんですが、 『YOUKAI(妖怪)』という単語をご存知かな?」 確か、原作の「TOUHOU PROJECT」の登場人物の大半がそれのはずだ。 人ならざるもの。魔境の住人 と言った解釈彼はしている。 「大抵、『Monster』『Goblin』『Demon』と訳されているが、厳密に言うとどれも違う」 「所謂『種族』や『怪物』ではなく、『人では捉えられない現象』の全てに何らかの人格と名前を与えたものですな。 本来なら、一匹・二匹とカウントするものじゃない」 「それが………何だ?」 「『ゆっくり』はそれに近い。――――既に、『こういうもの』としての現象の個別の集合体―――妖怪なんです」 確かに――――流れを見ていたり、自由でいいはずと言われているにも関わらず、ある程度の類似性ができてしまう事は よくあったし、不特定多数のユーザーが好き勝手に匿名で作っているのにも関わらず――たまに、「ゆっくりは生きている」という 錯覚に陥りそうになる事はある。 それが、本当に意志を持ったとでも? 「そういう事もあるんですよ…………」 「馬鹿な………」 「普通はそういう反応になりますよね」 「大抵、妖怪の方から人間に話しかけるなんて事はしない―――――でもだ」 再びサングラスをかけ直す。 「あなたはそのバランスを壊してしまった」 ―――それが、本題か 「よ、妖怪の事を表に出してはいけないというなら、他にもそんなものはあるだろう」 「そんな事にまで口出しはしませんよ」 「何か間違った表現があって、ゆっくりが誤解されるとかなら………」 「その逆です」 二人は身を乗り出した 「正確すぎるんですよ 『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』は」 「へ?」 「もう少し上手く言うと、あなたが書いた 『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』 と『全く同じ世界』が存在するんです」 そうした話は、どこかで聞いたことがあるが――――― 「あんなに生き生きとゆっくりを描いている作品はない。まあ、世界観が被ってしまう、同一の設定で動いている世界がある、 そういう事はままあるんですが、あそこまで見事に一致してしまった例はない」 「しかも………これが劇場版。 商業作品として、公式に全国で公開されるとなると、もう他人事じゃない」 それとなくは解ってきた。 「じゃあ、この映画の公開を中止しろと?」 「そこまでは言わないよ。内容を変えて欲しい」 「…………断ると言ったら?」 「境界が壊れて、困るのはあなたなんですよ?」 例えば何が起こるというのだ――――――と、何の気なしに外を見て―――――腰を抜かしそうになった。 ┌───────────────────────────────────────┐│ _,,....,,_ _ ‘ . . ・ . . . . . ..││ -''" `' 、 . ・ . . . ││ ヽ \ ' ‘ . . . ││ | ;ノ´ ̄\ \_,. -‐ァ . . 。 . ・ .││ | ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__ + . . ・ + . . ゜ ......││ _,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7 + .....││ r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノ + ......││ !イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ . l| . . 。 ..││ `! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノ 。 . 。_;;;(;;);;__。 ││ ,' ノ !'" ,___, "' i .レ' . . ゜ ゜ . ヾ;;!;;!;;!;;!;!/ . ..││ ( ,ハ ヽ _ン 人! . i ! i ..││ ,.ヘ,)、 )>,、 _____, ,.イ ハ . ; ''"'"'' ‐i =;;;;;;i;=; ;;i ││ . , . . ゜ . ,,.... ;; ''"'''‐- ,.. ''" `l;;;;;;;;;;;l;;l´‐-;;,_,,,.. .││ . ,,,,,.... ''" ! ! ""'' ‐- ....│└───────────────────────────────────────┘ 「始まったな…………」 「この世界には現実にゆっくりはいないのに」 「だからと言って、これはない!!!」 流石に、これは二人にとっても驚きだったらしく、彼をおいて二人で話し合っている。どうも、かの映画以外に、 日本で行われているリレー企画とやらが原因らしいが、日本で起きた現象がこうして肉眼で見えるというのは どういう訳だ? 「脅迫かこれは!!?」 「コッチだって困るんですよ。好きでこういう事を引き起こしてるのが我々じゃない」 ゆっくりまりさはカバンから、今度は束ねた原稿用紙をを取り出した。 「とりあえずこの通り書き直してくれませんか?」 「どれだけだ!!?」 「何簡単な事。台詞および配役、ちょっとしたプロットの変更です。大筋は変わりませんから」 「ぬう……・・・ 」 本当にそれだけで済むのなら―――――これから何が起こるか解らないが、確かに心血注いだ脚本ではあるが、 やむ終えまい。 本当に見てくれるチビっ子達の未来のためなら………… が――――渡してくれた原稿は、少し酷かった。 何と言うか―――――何か「こうしてくれないと困る」というか、作成者の焦りがありありと感じられるのだ。ありがちな 展開や台詞回しではない、が、その「ありがちさ」を意識して、無理にその反対のものを作ろうとしているような。 その割にはアリスの役どころが酷い 他の奇をてらったしわ寄せが一気に彼女に押し寄せてきた様。それだけ、よくありがちな描かれ方を凝縮して 固めたような、好感を持てないアリスだった。 誰が描いたのかは知らないが――――――というか、目の前に座っているのが、そのゆっくりアリスの象徴とも言える存在 なので、辛くないのかと思ったが、よく見ると口の端をつぐんでいる。 やはり面白くないのだろう。 「おい………お前、不満なわけ?」 「別に」 「勘違いすんじゃあねえぞお………お前なんか、『いつも通り』って言わせときゃいいんだよ…」 「そんなのたくさんあるじゃない」 「うるせえ!!! テンプレがある方が入りやすいんだよ!!! 台詞も行動も大体そんなもんが決まってりゃあとっつけるだろ!!!」 「―――あっそ」 「表出るか?ん?」 ゆっくりAAや、その他の創作でも、ここまで醜い言い方をするゆっくりまりさも、不憫なゆっくりアリスも見た事がない…… 疑問に思った時――――― ┌──────────────────────────────────────────┐│ ,,.. -―- ..,, ,,.. -―- ..,, ,,.. -―- ..,, ,,.. -―- ..,, ,,.. -―- ..,, ...││ /\ /\ /\ /\ /\ /\ /\ /\ /\ /\ .││ ./ (ヒ] ヒン) ヽ / (ヒ] ヒン) ヽ / (ヒ] ヒン) ヽ / (ヒ] ヒン) ヽ / (ヒ] ヒン) ヽ ..││ { '" ,__, "' .} { '" ,__, "' .} { '" ,__, "' .} { '" ,__, "' .} { '" ,__, "' } ..││ \ ヾ_ノ / \ ヾ_ノ / \ ヾ_ノ / \ ヾ_ノ / \ ヾ_ノ / ││ `ー-----ー^ `ー-----ー^ `ー-----ー^ `ー-----ー^ `ー-----ー^ ...││ (つ ノ⊃ (つ ノ⊃ ⊂ヽ ノ⊃ ⊂ヽ と) ⊂ヽ と) ││ | (⌒) | (⌒) | | (⌒) | (⌒) | .││ し⌒ し⌒ し ⌒ J ⌒J ⌒J │└──────────────────────────────────────────┘ 窓の外に、何か居る。 ただてくてく歩いているだけで、窓ガラスを割って中に入り込もうとか、そういう訳ではなさそうだが―――――とにかく、 この世界が何かに蝕まれているという事だけは解った。 「さあ、この世界を救うためにも……」 「わ、解った。しかし、原稿は自宅だ。書き直しには…」 「いやいや、この契約書にサインをいただければいいですよ」 差し出したのは、とにかく極悪なデザインの便箋だった。どす黒い赤で、クセ字なのか、余程遠い国の言語なのか、 何か蟲がのたうちもがいている様な文字が書き連ねられ、プリントされている動物のイラストも、黒山羊やバッファロー・ セイウチといった、あまりガラの良くない面々ばかり。 「…………………」 そんな事よりも、彼の脳内をよぎり、筆を一瞬止めさせたのは――――― 仕事仲間たちの顔だった。 最初からほぼメンバーは変わる事無く、寝食を共にした戦友 映画化が決定した時、抱き合って喜んでくれた 「――――――――ごめん。みんな」 目頭が熱くなるのを堪えて、ペン先を走らそうとした時だった。 _人人人人人人人人人人人人人人人_ > そのサインちょっと待ったああ!!! <  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ _,,....,,_ .,,-''" \ ヽ \ | ;ノ´ ̄\ \_,. -‐ァ | ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__ _,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7 そいつらは偽者よ! _..,,-" rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/`7 "-..,,_r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノ !イ´ ,' | ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ ( `! !/レi' rr=-, r=;ァ レ'i ノ y' ノ !  ̄  ̄ i .レ' ノノ ,ハri^ixx 、__, xxrvィ人 ( ,.ヘ,)、 〉、`ー-、 .___ ,.-‐' / ハ ( )',. / `ァ 〉r‐┤ r‐' ./} ノ ノヽ {. / / . l ./| | / | 隣のテーブルだった。 大きさはビーチボール程度。 何故か巨大なパフェまで注文している。 ちゃんと体があると思っていたら、椅子から降りた瞬間に消えていた。 何なんだ 床には――――本当に生首だけのゆっくりまりさが転がる。 「監督、そいつは偽者なのぜ!!! 大切なことだから2回言いました!!!」 「何だって?」 普通に考えれば、生首の方が偽者のはずなのだが――――― 「大体誰だよお前等。きもい。主に体がきもい」 「ふん、解りやすく首だけでやってきたか。しかし、そんな見た目だけで騙されるほど人間も愚かじゃないのよ」 「監督、騙されてはいけません。そのゆっくりまりさこそ偽者です。私達を信じてください」 相手が ゆっくり と限定すると、目の前の6頭身より、1頭身を信じたくなる。 「口車に乗せられてはいけないのぜ! こいつらは都合のいい事を言って、脚本を書き換えるつもりなのぜ! 自分の作品は自分で守らなければならないのぜ!」 「黙らっしゃいこのへちゃむくれ!!」 「もう一度頭を冷やすのぜ。運命は受け入れるもの。親に対して、もう一度違う設定で産み直してくれ、 なんて要求する子どもがどこにいるのぜ」 正確に言うと、自分は親ではない。 が――――改めて、今までゆっくりと向かい合った2年間と、喜んでくれたチビっ子達の声を思い出す 「ささ、監督こんな所に長居は無用。一端スタジオに帰りましょうぜ」 「………」 「御代はまりさが先に立て替えておいたのゼ」 「――――ふむ。行くか」 彼は、1頭身を信じることにした。 荷物を手早くまとめると、通路にはあの6頭身の二人が立ちはだかっている。 ふよふよと浮遊する、凶悪な武装を施した人形達、そして片手には八卦炉―――あとバールの様なもの 「おっと、これはバールの様なものではなく、乙 ですよ? 何をそんなに怯えているんです監督?」 「逆だろう普通!」 その瞬間―――――二人は気づいていない様子だが、後ろから猛烈な勢いで、狭いファミリーレストランの テーブルの合間をぬって走ってくる物体が見えた。 台車の様に見えるが、取っ手が無く、押している人間も無い。そして分厚い。 聞き覚えのある音だ スィー ・・・・・ 「ぐはあっ!」 「うぼぁ」 思い切り踵に突撃され、ひっくり返る二人。 劇中、何度も登場した名車。通称「スィー」。ひねりが無い事この上ないが、変な名前をつけるべきではないとして 皆こう呼んでいる 「乗るのぜ監督!」 「わ……………解った!」 もんどり打つ二人の6頭身を乗り越え、4人がけのダイニングテーブル程の上に体育座りで乗ったが、もの凄くバランスが悪い。 あまり真面目に考えていなかったが、どうやって皆運転してるんだろう? 「出発ー! スタジオへGO!」 店員は誰もいなかったが、スィーはがさつにも扉のガラスを蹴破って飛び出した 外は猛吹雪になっていた。 さっきまで晴れていたのに………… まりさはもぞもぞと動いて、顎の下にあるらしい突起を押した。 と―――――スィーに内蔵されていた、赤と緑の照明が灯る。 これは―――― まさしく『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』に 登場する予定の「ネオスィー」の演出! 「間違いない! 君こそ本物のゆっくりまりさ―――― いや、エレクトロニックまりさなんだね!」 「何度も言ってるのゼ!」 しかし――――ちょっと気になったことが サイド部分の照明が、何か下品な口唇の形を作っているのだ 「こんなデザインじゃなかったぞ」 「多少アレンジがあると思うのぜ」 ――――まさか、口車に乗せられている!!? 凍えるような雪の中、パーキングエリアから出ようとすると――――前方に照らし出されたものがある ,....、, / `ー-、 /./゙''ー 、、 ヽ、 il" `'-、 ゙' 、 .l゙ ゙''- \ l .,..-''''"^゙''ー ..,,. ゙' .\_ .! /゙ _-ー - .. 、 \. ヽiヒ_ン) ! l /ヘ / ヘ /゙i 、, .\ ヾ' ヘ. .!! |`l 丶 '!'´ | ''、 ヽ. ヽ . ., │.!ゝ //\ /!'  ̄/ヘ `. ヘ. ,, ジョ……… ジョーズ!!! .! !」 / ゝ、__/_. ! ! ヽ ., .l |丿 イ ,ヘ ヽ /ヘ .! l. .l l |⊥ ナ ル ヽ、ナ‐- /ヽ " ..l l`l│(ヒ_] ヒ_ン ) i}./、! ! .l .| !´ !"" ,___, ""/ ; .ゝ l i ,,.! 、人 ヽ _ン ∠ノ ; } .! .l /゙ .L| . /ヘ , 、 _,. <_Z_ ;' | l ヘ |`.ー ..`' ーl/ ヘ./\∧_/\/ / ..、 ! `゙゙ ' ' ――--――-‐'" ヘ . ヽ、 l l {`_‐-、 /´ i ヘヽヽ \ / ハヽ ', ヽ ヽ,.`..-‐‐ 、// ヽ 、 ,7"Y \..,_ ノン // ヽ ', ,' / i { i ハ i ヽ 7 H フ それに……おりんりんドラゴン!!! i i i/レ_iL/!ヽ、」r=;ァソ ヽノ ソ レ' イ rr=- , レ';.彡ル ∨' ー=彡" `y、イノ iY', iノ イノ 〈ン ヽ ./{ノイ ┐┐_(Y〉 ` ヽ 、_ ノ"´ノハ! /"二"\i┐,,.., ) ( /⌒ヽ  ̄ \ \-''")\ __./ .i" ̄`iヽ //"i".\ ,,..-''" ./ \ヽ /----i \/ i \ ,,..-''" /ι]___/ .., /-─--i ) rゝ i \ \ /⊂ゝ__ ヽヽ |i i| "⌒丿ヽ i \ |/ _ ヾ⊃--i"" ̄ ̄"\__,.⊂-ヾ⊃ i /  ̄ ̄i- \ / i"-______-"ヽ\_,.----.,,_i/ i/ / i_ i | ヽ \i i i `-──--`"i .| | ヽ| i i_-_____,-i / | \ \i-__ __// / \_,ゝ.二二--/ / / i / ∠二_/ ./ \ .\ \ .// ヽ...ゝ ノ `'-、,_ N 、 / <__,,.--, \--ゝ \ \ ヾ | / \| (ヒ_]厂ヽ>┴'┴-<ヒ_ン\ /ー‐' / ∪ __,___, __ `ヽ| お………おりんりんドラゴンまで!!! ト、___/ `''ヽ _ン_`′ \ __ト ^∪ ,. ´/\__∧ ̄フト、 \. ∨ /|\/-'‐' ̄  ̄ヽ|/ヽ 〉 へ/ヽ/i __. r┤ c /ト、ノVレ'7;__,.!/V !__ハヽ`, lノ ヽ , ─ 、 ノ iヽ/ヽ∧ { ハ ィレ == == lゝ( / i ! > < ,─、ヽ iヘ / !///∪ ,___,/// i 〈ヽ/ `─ '/ ( i i \ \ i 〉 ヽ _ン ∪ 人 iハ〉 /  ̄\`- ' \ ヾ|ヽ/ヽ ノヽ/\/ヽ,ハ ノ / ┴|i \. `┴─┴‐┴一─,ハヘ / / ! ヽ, /\ / ヽ i ‐一'´ / いずれも、『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』のみ 登場する名悪役達である。 よくみると、遠くには、スピンオフで 冬休み子ども劇場『黒谷スパイダーマッ 逆襲のグリーンアイドゴブリン『』に登場した水橋グリーンアイドゴブリンまでいる。 「本当に現実に出てきてしまったのか………?」 「突っ切るのぜ! しっかり捕まってるのぜ監督!!!」 「そういえばまりさ。今回主演は君だが、相方のれいむはどうした?」 「あー……… カナダの刑務所にいるよ」 確かに、色々人間を食べたりとか、結構悪い事をさせてしまったから……… 吹雪で視界も悪いのに、すぃーは真っ直ぐ3体のモンスターに立ち向かっていく。ジョーズはもとより動けないが、 おりんりんドラゴンは本当に炎を吐き出した。 熱い! が、まりさはへばりつくようにスィーに対して扁平に生ったかと思うと、その全体重を右に傾ける! 何やら饅頭と言うよりプリンのようでもの凄く気持ち悪かったが、スィーがそれによって傾き、結果としてドラゴンの 股の間を潜り抜けた! その先にせまり来る尻尾があったが、今度は反対方向へ傾け潜り抜け――― 二人はモンスター達3体を突破 した! 「すごい! パーキングエリアって舞台もそうだが、本当に映画そのものじゃないか!!!」 彼は、この『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』の 成功を確信した。 しかし――――― 「こんなに広かったか?」 「広かったよ」 雪で視界が悪いとは言え、パーキングエリアの出口が見えない。 真っ暗な空の下、スィーのエレクトリカルな照明で照らされているが、永遠に続いてるかのような錯覚を受ける。 そういえば、段々寒くなくなってきた。 感覚が薄れたのかと思ったが、別に眠いわけではない。 「ど、どれくらいかかるんだ?」 「―――監督は余計な心配はしないでいいのぜ」 ザボザボと雪を掻き分けて聞くと―――――――― 再び、現れた巨大な影がある 今度は4体 「何だ………こいつら…………?」 「あ…… アークオルフェノク!!! デスイマジン!!! バットファンガイア!!! それに………ブラックエンドまで!!!」 何だこの統一感の無さは 大体 「こんな奴等、『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』に 登場してないぞ?」 「いや、出てきただろ」 「他作品のボス達じゃないか!!!」 しかも日本の実写の……… 「まりさ……… 私の事、だましてないか?」 「だましてないーよっ♪」 白い煙を上げながら、スィーは急カーブでブラックエンドが放つ火球を避け、ついでにアークオルフェノクに体当たりを食らわす 「いや、さっきの6頭身達も信用したわけじゃないかが、何と言うか………」 「気にしないで。何も考えずに、任せなよ!」 「え……… 何だって?」 どういう原理か解らないが、運転はしたまま、一頭身のまりさの唇が、耳たぶすれすれに近づく 熱っぽい口調で、吐息とともに囁かれた ――――そんなもの、任せときゃ、いいのさ……… 「そんなに近づいて話すな。気持ち悪い」 「あ、ごめん」 吹雪は止みそうにない。 相変わらず寒くは無いが、いつ、このパーキングエリアから出られるのだろう? 了 バールのような乙で吹いたw 途中二次創作や3次創作、2chにおけるAAのあり方などについて考えさせる内容かと思ったら、 そんなこともなかったぜ。 -- 名無しさん (2010-01-11 00 20 14) アークオルフェノクゥゥゥ!!! -- 名無しさん (2010-01-11 11 16 42) 名前 コメント
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アスキーアート 2chでの歴史 Goluahでの歴史 ダウンロード 基本データ オプション 性能・戦術 技解説 コンボ 元ネタ アスキーアート _,,....,,_ _人人人人人人人人人人人人人人人_ -''" `''> ゆっくりしていってね!!! < ヽ  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄ | ;ノ´ ̄\ \_,. -‐ァ __ _____ ______ | ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__ ,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、 _,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7 'r ´ ヽ、ン、 rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/`7 ,'==─- -─==', i r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノ i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i | !イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .|| `! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノ !Y!"" ,___, "" 「 !ノ i | ,' ノ !'" ,___, "' i .レ' L.',. ヽ _ン L」 ノ| .| ( ,ハ ヽ _ン 人! | ||ヽ、 ,イ| ||イ| / ,.ヘ,)、 )>,、 _____, ,.イ ハ レ ル` ー--─ ´ルレ レ´ 2chでの歴史 弾幕系同人STG「東方Project」の主人公、 博麗 霊夢(右)と霧雨 魔理沙(左)のAA。 東方関連スレが立つとかなり早い段階(ほぼ10レス以内)に貼られる。 というか、東方と関係ないスレでも無差別爆撃気味に貼られる事がある。 「このスレでゆっくりしていってね」という歓迎の意味合いなのだろうが、 一体何がしたいのか謎。元ネタも不明。よく2ゲットしているところを見かける。 「2ch全AAイラスト化計画」より転載 Goluahでの歴史 08/03/14にリラの人により未完成版公開。 08/11/21に完成版が公開される。 ダウンロード ちょっとためしにみたいな 基本データ HP ゲージ本数 ジャンプ回数 ダッシュ チェーン GC 備考 前 後 空 地 空 2000 1 - - - - - - - ジャンプ不可、ガード不可、投げ無効、Dでキャラ切り替え オプション 項目 pt 排他 解説 COIN IKKO IRERU 0 - 無意味 SUMANU SUMANU 0 - 「しあわせ~!」が「すまぬ、すまぬ」に変化。無意味 TARE MARISA 0 - ドット絵っていいよね!がたれ魔理沙に変化。無意味 COMMAND UKETUKE NAGAI 0 A コマンド受付が長くなります(40フレーム) COMMAND UKETUKE MIJIKAI 0 B コマンド受付が短くなります(20フレーム) 合計 65536 - - 性能・戦術 2体を同時に操作する特殊なキャラ。1モラトリオとは異なり、Dボタンで操作(移動)するキャラクターを切り替える。 コマンドは簡単だが、数が多いので局面に合わせて使い分けれるかが重要。 技解説 コンボ 元ネタ 技名 元技 元キャラ モチーフ - 東方Project 博麗 霊夢・霧雨 魔理沙
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「ゆ? ゆっくりうごいてるよ! もうすぐうまれるね!」 「ゆゆ! ほんとだわ! いまやわらかいばしょをよういするわ!」 ありすは急いで脇の方に置いてあった枯草を、れいむの前に敷き詰める。 ちょうどそこは、れいむの頭から生えている赤ちゃんたちの落ちる場所である。 「ゆっくりうまれてね!」 「「「ゆっゆ!」」」 産まれる直前ともなると、親の言葉に反応してプルプルと震える事ができる。 れいむはその振動を感じ取って幸せに包まれた。 もうすぐ愛する我が子と会える事に。 「ゆゆ! うまれるわ! ゆっくりがんばってね!」 ありすが掛け声をかける。れいむは子供たちが無事に生まれる事を願っていた。 ポロリと。頭の茎から一匹のありすが落ちた。そしてそれを皮きりに残り七匹も枯草の上に落ちてくる。 たっぷりと敷き詰めた枯草の上は柔らかいのだろう。落ちた後も枯草の上でモゾモゾとしていた。 親である二匹は心配そうに見つめていた。 やがて、三匹が目を開けた。そして二匹の方を向いて、生まれたてとは思えないほど大きな声で 「「「「ゆっきゅりちていっちぇね!!!」」」 そう言った。れいむはその光景を見て思わず涙ぐむ。 「ゆぐ、ゆぐっ!・・・ゆっくりしていってね!!!」 ありすもとても幸せそうな顔で挨拶を交わす。 「ゆーゆ♪」 「ゆっきゅりごひゃんたべちゃわ!」 「ゆっくりー!」 ありすが三匹とれいむが五匹。植物型でも少々多い。 が、両親は特に気にしなかった。今の季節は春である。食料も出産前から十分に溜めている おうちの方も、ゆっくりにしてはかなり広い方なので、狭いという事もない。 「おちびちゃんたち! ゆっくりごはんをたべてね!」 れいむがそう言うのと同時に、頭の上から茎が落ちてきた。 子供に送られていた栄養がたっぷりと詰まっていて、味もほどほどに抑えられている茎は 最初に子供が食べるものとしては最高の餌だ。 ありすとれいむはそれらを口の中に入れて、むーしゃむーしゃと噛み砕いた。 「ゆゆ! ゆっきゅちごひゃんをとらないでね!」 一匹の赤れいむが怒り出す。れいむは謝りながら 「ごめんねあかちゃん! でもこれでやわらかくなったからゆっくりたべれるよ。」 「ゆっくりたべてね!」 生まれたての赤ちゃん達はむしゃむしゃと柔らかくなった茎に被りつく。 そして生まれて初めての食事を楽しむ。 「「「「「「「むーちゃ!むーちゃ! ちあわちぇー!」」」」」」」 「ゆっきゅちちちぇいってね!!!」 「ゆ?」 両親は何か違和感を感じた。が、この時はそれは何なのかはわからなかった。 食事を終えた赤ちゃんたちは、さっそく家の中で遊んでいた。 「ゆっっきゅちおうたをききちゃいよ!」 「ありちゅはとかいちぇきなおうちゃをききちゃい!」 「れーみゅはすりすりしちゃいよ!」 無邪気に親に甘える赤ちゃん達。その中で変な言葉が聞こえてきた。 「ゆっゆっー! ゆっきゅりちちぇいっちぇね!」 一番小さい赤れいむである。 「ゆゆ? れーみゅたちはゆっきゅちちちぇるよ?」 「どうしたのあかちゃん? ゆっくりしてるわよみんな?」 赤れいむに話しかける家族。しかし帰ってくる答えは 「ゆっゆっゆー!」や 「ゆっくりー♪」 「ゆ?」 といった言葉しか返さない。というか基本的に「ゆっくりしていってね!!!(発音修正済み)」 か、「ゆー」とかしか言わないのだ。 「ゆ? どうちちゃったのれーみゅ?」 心配そうに見つめる兄弟 「ゆゆ! どうなってるの? まさかびょうきなの!」 れいむはソワソワと落ち着きなくおうちの中をうろついている。 ありすは家族を落ち着かせようとした。 「おちついてねみんな! いまぱちゅりーをよんでくるわ!」 そういって大急ぎで近くのぱちゅりーを呼びに行った。 「むきゅん! これはせんぞがえりね!!!」 「ゆー? なにそれぱちゅりー?」 ぱちゅりーの言った言葉の意味がわからないれいむ達。ぱちゅりーは話を続けた。 「むかしむかし、ゆっくりがだれにもじゃまされずにゆっくりしていたじだいとがあったのよ! むかしはみんな『ゆっくりしていってね!!!』しかいわなかったそうだわ!」 「それで! だいじょうぶなのあかちゃんは!」 ぱちゅりーはあくまで冷静にみんなに話す。 「おちついてねありす。これはとてもうんのいいことなのよ! むかしのゆっくりはぜったいにゆっくりできるっていいつたえがあるの! このこもとてもゆっくりできるはずよ!」 「ゆゆーん! さすがれいむたちのこだね! とってもゆっくりできるなんてすごいね!」 「とってもとかいはなこね! ありすはうれしいわ!」 「れーみゅはとちぇもゆっきゅりできるんだね!」 家族はとてもゆっくりできるという事を大いに喜んだ。 そして家族の生活は始まった。 最初の頃は、言葉が伝わらずに大変苦労したが、それでも長い間暮していると、言葉が伝わるようになっていった。 元々、ゆっくり達の話す『ゆっくり』にはかなり広い範囲の意味が込められている。 それこそ『おいしい』という意味から敵がいるかいないかまで、状況に応じて意味が違ってくる。 太古のゆっくりはその微妙なニュアンスの違いを感じ取っていたのかもしれない。あるいは意志の疎通など必要なかったのか。 とにかく、進化したとはいえ現在のゆっくり達の遺伝子にもそれは受け継がれている。 要は馴れれば分かるようになってくるのだ。 「ゆっくりしていってね!」 「そうねれいむ! きょうはおそとでとかいてきなひなたぼっこをするわ!」 「ゆっくりおひさまにあたろうね!」 「おかーさんもゆっくりいくよ!」 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆー!」 この一月の間に完璧なコミュニケーションが取れるようになった。 家族は近くの野原で思い思いに遊んだ。 「ゆっくりころがるよー!」 「ゆゆー! まってねばったさん!」 「ゆゆーん! とかいはのたんぽぽよ! れいむにあげるわ!」 「ゆっくりー! ゆっくりしていってね!!!」 「おねーちゃん! れいむもほしいよ!」 両親はその光景を眺めていた。 「みんなとってもゆっくりできてるね!」 「そうよね。ありすたちはとってもしあわせものね。」 互いに頬を寄せ合う二匹。それは親愛の証でもあった。 その時だった。二匹の後頭部ががっちりと何かに掴まれたのは。 「ゆゆ! だれなの! ゆっくりはなしてね!」 「そうよ! ありすたちはとってもよっくりしてるのよ!」 「ぷくううううううううう」と膨らんで怒り出す二匹。しかし掴んだ相手はそんな事はまるで気にしなかった。 「う~♪ あっまあまだっどぉー♪」 間抜けな声が聞こえた。そしてそれは近くで聞いてはいけない声だった。 「「でびりゃだあああああああああ!!!!!」」 「やめてね! おかーさんたちをはなしてね!!!」 子供たちは両親を掴んだ敵に対して体当たりを繰り出す。しかしそんなものは効果がない。 「うー? じゃまなんだどぉー! ちっちゃいあまあまはおちびちゃんたちのぶんなんだからー! だまってるんだどぉ♪」 そういって足でガッ!っと踏みつける。 「やべちぇえええええええええ!!!!」 「いたいですうううううううう!!!! 「ありすもういやああああああ!!! だれかたすけてえええええええええ!!!!」 次々に踏みつぶされる兄弟。あのれいむも家族を助けようとするが、 「まってねれいむ!」 長女のありすに止められた。 「ゆ! ゆっくりしていってね!」 「わたしたちじゃかてないわ! どすをよんできて!」 れいむ達の家の近くにはドスまりさが住んでいる。群れは持っていないが、ドスの周りには大勢のゆっくりが住んでおり れいむ達もその一つだ。 ドスならばみんなを助けられるとありすは考えた。 「ゆっくりしててね!!!」 れいむはそれを理解して急いでドスの家へ向かっていった。 れみりゃは家族を踏むのに夢中で気づかなかった。 「う~? ぷにぷにしておもしろいどぉ~♪」 「いじゃいよ! やめてよ! ゆっくりできないよ!」 れいむは走った。途中で何度も転びそうになりながらも必死で走った。家族の為に。 その思いが通じたのか、何の障害もなくドスの家の前についた。 「ゆっくりしていってね!!!」 そういってドスの家へ飛び込むれいむ。 「ゆゆ? ゆっくりしていってね!!!」 中にはドスと何匹かのゆっくりがいた。その中にはぱちゅりーのつがいのまりさもいた。 「どうしたの? ゆっくりはなしてね!」 ドスの声に反応して、さっそく助けを求めようとするれいむ。 しかし 「ゆゆ? ちゃんとはなしてくれないとわからないよ! ドスだっておこるよ!」 「ゆ・・・ゆっくりしていってね!!!」 「さっきからなにいってるかわからいよ! れいむはちゃんとしゃべってね!!!」 「ばかなの? しぬの?」 かれこれ10分はこんな調子である。 れいむの言葉は馴れた家族には伝わったが、初めて会話する他のゆっくりには通じなかったのだ。 「ゆ・・・ゆっゆっくりしていってね!!!」 ついには泣きだしながら喋るれいむ。 「だからわからないっていってるでしょ? ばかなの?」 だんだんとドスは苛立ってきた。そしてもう家から追い出そうかと考えたちょうどその時 「どすー!たいへんなんだよー!れいむとありすたちがれみりゃにおそわれてるんだよー!」 「れみりゃのこどもたちもいっぱいきてるみょん!」 運よくれみりゃ達を目撃したちぇんとようむがドスに伝えに来たのだ。 「ゆ! わかったよ! すぐいくね!」 「ゆっ!ゆっくりしていってね!!!」 ドスがやっと動き出した事に喜ぶれいむ。 そして一目散に家族の元へ向かった。 助けを連れて戻ってきたれいむ。しかしそこに居たのはれみりゃ達とただの皮だった。 「うー! おいしかったどぉー! れみ☆りあ☆うー☆」 「とってもえれがんとだどぉ~♪ れみりゃのおちびちゃんはとってもかりしゅまなんだどぉー!」 「さくやー! のどがかわいた~♪ れみりゃはおれんじじゅーすがのみたいどぉー!」 「うっうー! のう☆さつだんすでふみふみだどぉ~♪」 そこには餡子を失って皮だけになった家族で弄ぶれみりゃ達がいた。 既に光のない眼で空を見ている両親と兄弟。先ほどまで元気に動いていた家族。 それが今ではただの動かない皮。 「ゆ・・・・ゆっくりじでいっでねぇえええええええええ!!!!!!!」 れいむは半ば半狂乱になりながらゴロゴロと転がりまわった。 それを周りのゆっくりが止めてるうちに、ドスはれみりゃ達に近づいた。 「ゆっくりできないれみりゃはゆっくりしんでね!!!」 それだけ言い放つと、口からドススパークを放ち、れみりゃ達をあっという間にやっつけた。 このれみりゃ達はみんなのごはんとして分けることになった。 ドスの家の前。近くのゆっくりが全員集まり、れいむとありす達を土の中に埋葬していた。 そこには当然れいむが居るはずである。しかしれいむはそこから少し離れた場所にいた。 近づけて貰えないのだ。 ゆっくり達は最後の別れを済ませた後に、口ぐちにれいむを責め立てた。 「れいむがちゃんといわないからありすたちはしんだんだみょん!」 「こどもなんだからしゃべれるでしょ! ほんとにできそこないのゆっくりだね!」 「ありすたちがしんだのはれいむのせいだね! はんせいしなくていいからゆっくりしんでね!!!」 「ことびゃもまちょもねはなちぇないなんて、ゆっきゅちできにゃいね!!!」 「ほんとはきょうだいをゆっくりさせたくなかったんでしょ!」 遂にはドスまでも 「れいむのせいだからね! ドスがもっとはやくついたらみんなぶじだったんだよ! わかってるの? ばかなの? しぬの? ゆっくりしないでどっかいってね!!!」 「ゆゆ・・・ゆっくりしていってね!!! ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくじでぎるわげないでしょおおおおおおおおおおおお!!!! どっどどでていってねえええええええ!!!!!」 こうしてれいむはこの付近から立ち退くことになった。れいむにとって嬉しかったことは ぱちゅりーだけは最後まで味方でいてくれた事だ。 「れいむ、たべられるものやかりのしかたはおぼえてるわね?」 出発当日、ぱちゅりーは朝早くからやってきて真剣な目で問いかけてきた。 「ゆっくりしていってね!!!」 ぱちゅりーには言葉の意味がわからなかったが、おそらく肯定したのだと思って話を続けた。 「そう、おうちのつくりかたもだいじょうぶね? これはあさごはんよ!」 そういって口から差し出したのは、はちみつだった。 野生のゆっくりにとっては滅多に食べれない貴重なものである。 「ゆっくりしていってね!!!」 「れいむもゆっくりしてね!!! がんばってねれいむ!!!」 帰って行ったぱちゅりーの後ろ姿を寂しげに見つめながら、れいむは新たな家を求めて旅立った。 【あとがき】 昔書いて途中でほったらかしたヤツ うん。何に影響を受けてたかよくわかるな俺 あと、久々に発掘した時に書かれてたメモが 【メモ】 ジャギ様登場 どういうことなの…… byバスケの人 このSSに感想をつける